シンデレラの物語を戦時中に置き換えたら…明日の命も知れない状況下で男女は何を求めるのか

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出会いは戦時下のダンスホール

 第二次世界大戦下の1940年、ロンドン。意地悪な継母と義理のきょうだいたちに使用人のようにこき使われているシンデレラは、負傷した英国空軍のパイロットであるハリーを助けます。

 どうしても彼ともう一度会いたいシンデレラは、スーツケースに荷物を詰めて、霧の夜のロンドンへ。「天使」の手助けで彼と再会したのは、ダンスホール「カフェ・ド・パリ」。

 しかし、ナチス・ドイツの大規模攻撃「ロンドン大空襲」でカフェ・ド・パリは崩壊し、シンデレラは病院へと運ばれます。廃墟でハリーが見つけたのは、片方だけのハイヒール――。

 シンデレラは地味な外見の少女ですが、家族の不在時には継母のきらびやかな衣装をこっそり着てパーティごっこを楽しんでいます。パートナーに見立てたトルソーが突然動き出すパ・ド・ドゥ(男女ふたりのダンサーによる踊り)はとてもチャーミングで、彼女の夢見がちな内面が伝わってきます。

 元のお話の王子様にあたるハリーが勤務する英国空軍は、当時「もっともかっこいい」とされていた仕事。凛々しい軍服姿のハリーと美しいドレス姿のシンデレラは、カフェ・ド・パリでロマンチックなワルツを踊って愛を確かめ合い、ベッドを共にします。

 マシュー・ボーンの作品は演劇的要素が大きく、このベッドシーンも、かなりあからさまなセックス描写です。官能的でありながら、生々しさでなく愛を交歓する喜びだけが純粋に感じられるのは、バレエという表現が持つロマンチックさならでは。

 しかし、幸せな時間を過ごすふたりの頭上の時計は、午前0時まで間もなく。だんだん大きくなる針の音の緊迫感は、爆撃によるパニックとオーバーラップします。

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