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敗戦から73年。終戦記念日に観るべき「太平洋戦争を描いた映画10作」(ただし昭和限定)

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 今上天皇が来年4月30日に退位することが決まり、平成最後の夏を迎えた今、昭和の残像はまるで蜃気楼のようにおぼろげなものになっている。

 しかし、スクリーンに映し出される、あるいは液晶画面に表示される映画のなかの昭和は今も鮮明であり、これからも永遠に残り続ける。

 近年の大ヒットアニメ映画『この世界の片隅に』(監督:片渕須直/2016年11月12日公開)を挙げるまでもなく、日本では太平洋戦争を題材にした映画作品が数多く作られてきた。

 8月15日、73回目の「終戦の日」を迎えるにあたり、そうした映画のなかから、映画史的にエポックメイキングとなる作品を、特に昭和期に製作されたものに限り10本ピックアップしてみたい。

01 現在進行系の戦争をリアルタイムで映画化
『ハワイ・マレー沖海戦』

監督:山本嘉次郎 配給:東宝 1942(昭和17)年12月3日公開

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東宝より発売のDVD版ジャケット

 太平洋戦争の開戦は日本時間で1941(昭和16)年12月8日のこと。そして、その翌年には、これを取り上げた映画作品が公開されている。

 戦時下の戦争映画はいずれも軍の意向により製作された国威発揚を目的としたもの。もちろん、戦争の悲惨さがアピールされることもなければ、反戦のメッセージが込められることもなかった。

 そんな、初期の太平洋戦争映画の代表作が、東宝製作の本作。この作品は、公開当時の観客にとってつい最近の出来事となる真珠湾攻撃やマレー沖海戦での日本の勝利を、映像として再現しているもの。実質の主人公となるのは、海軍の厳しい訓練に耐えパイロットとなる若者であり、著名な俳優では原節子、藤田進、大河内傳次郎、木村功などが出演している。

 同作を語る上で欠かせない人物が、のちに“特撮の神様”と呼ばれる特技監督の円谷英二だろう。円谷の十八番ともいえるミニチュアを用いた特撮はリアリティ、迫力ともに高く評価され、検閲した軍関係者を驚かせたといわれる。

 なお、円谷の手腕は以後も『加藤隼戦闘隊』(監督:山本嘉次郎/1944(昭和19)年3月9日公開)、『雷撃隊出動』(監督:山本嘉次郎/1944(昭和19)年12月7日公開)といった戦時中の戦争映画で発揮されていく。

02 終戦と講和条約と反戦映画の登場
『日本戦歿学生の手記 きけ、わだつみの声』

監督:関川秀雄 配給:東横映画 公開:1950(昭和25)年6月15日

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東映より発売のDVD版ジャケット

 戦後、GHQの統制下にあった時代、戦争映画の製作は凍結されるが、1951(昭和26)年のサンフランシスコ講和条約の署名前後に、再び製作されるようになっていく。

 東映の前身のひとつである東横映画による本作はそのひとつ。これは、“日本初の反戦映画”といわれ、インド北東部のインパール攻略を目指した「インパール作戦」の部隊の学徒兵たちを描いている。当時の大衆は戦争に対する反発が大きかったこともあってか、大物スターの起用はなかったが劇場には多くの人が押し寄せた。

03 『ゴジラ』の立役者たちの戦後型戦争映画
『太平洋の鷲』

監督:本多猪四郎 配給:東宝 公開:1953(昭和28)年10月21日

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東宝より発売のDVD版ジャケット

 東宝製作の本作は、太平洋戦争の開戦からの推移をドキュメンタリー風に構成した作品だ。といっても、戦前の時代劇スター・大河内傳次郎が演じる山本五十六が主人公なので、取り上げられるのは日独伊三国軍事同盟の締結、真珠湾攻撃、ミッドウェー海戦、そして山本が命を失った海軍甲事件まで。終戦は割愛されている。

 また、同作は翌年に『ゴジラ』(1954年11月3日公開)を生み出す、本多猪四郎監督と特殊技術の円谷英二が初コンビを組んだ作品であることや、そしてスーツアクターの第一人者となる中島春雄が、日本初のファイアースタントを演じているのも特筆点。その仕事ぶりが評価されてか、中島は“ゴジラのなかの人”に抜擢されたともいわれる。

04 仲代達矢の評価を高めた史上最長の映画
『人間の條件』

監督:小林正樹 配給:松竹 1959(昭和34)年1月15日公開

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松竹より発売のDVD版『人間の條件 第1部 純愛篇』ジャケット

 高度経済成長期の序盤戦といえる1959年に、“超大作”の戦争映画が公開された。松竹配給による『人間の條件』だ。

 本作の“超大作”たるゆえんは、主演の仲代達矢ほかキャストの豪華さ、物語のスケールの大きさもさることながら、日本映画史上に残る上映時間の長さにある。

 戦時下の満州で、戦争に反対していたものの自らもそこに参加せざるを得なくなる男が主人公で、「第一部 純愛篇&第二部 激怒篇」「第三部 望郷篇&第四部 戦雲篇」「第五部 死の脱出篇&第六部 曠野の彷徨篇」と全6部構成を計3回に分けて公開した。そのトータルの上映時間はなんと9時間31分。

 この作品は、映画館で夜を徹して一挙上映されるケースがたびたびあり、それがいわゆるオールナイト興行の走りとなったともいわれる。

 第1部撮影当時は27歳だった仲代達矢の演技は高く評価され、以後は黒澤明、岡本喜八、山本薩夫、市川崑ら日本映画史に残る大監督らに重宝される大俳優となっていくことになる。

05 西部劇風明るい戦争映画という新ジャンル
『独立愚連隊』

監督:岡本喜八 配給:東宝 公開:1959(昭和34)年10月6日

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『人間の條件』とほぼ同時期に企画されていた作品が本作。当初は仲代達矢に主演として出演依頼があったというが、スケジュール的にも道義的にもそれはかなわず。代わりに、アクの強い風貌からそれまで悪役が多かった佐藤允が抜擢された。

 ストーリーは太平洋戦争末期、中国大陸で奮闘する「独立愚連隊」という小隊のところに、従軍記者を名乗る男がやってくることで展開していく。

 どちらかというと、それまでの戦争映画にありがちな悲壮感は薄く、西部劇へのオマージュに満ちた痛快アクション作に仕上がっている。戦争のナンセンスさを皮肉っているように見えるが、公開当時は好戦的だとの評価もあったという。

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ミゾロギ・ダイスケ

ライター・編集者・昭和文化研究家/映画・アイドルなど芸能全般、スポーツ、時事ネタ、事件などを守備範囲とする。今日の事象から、過去の関連した事象を遡り分析することが多い。著書に『未解決事件の昭和史』(双葉社)など。

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