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敗戦から73年。終戦記念日に観るべき「太平洋戦争を描いた映画10作」(ただし昭和限定)

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06 8月15日そのものをテーマとした初めての作品
『日本のいちばん長い日』

監督:岡本喜八 配給:東宝 公開:1967(昭和42)年8月3日公開

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『独立愚連隊』から8年、東宝の主軸となっていた岡本喜八が任された、意欲的な大作戦争映画である本作。

 これは文字通り、ポツダム宣言、アメリカの広島・長崎への原爆投下を経て、昭和天皇や鈴木貫太郎内閣の閣僚たちが日本の降伏を決定した1945年8月14日の正午から、玉音放送を通じて国民がポツダム宣言の受諾を知る8月15日正午までの24時間を克明に描いたもの。

 太平洋戦争の終結そのものをメインテーマとした初めての作品で、三船敏郎から加山雄三まで東宝オールスター出演作でもある。

 日本の中枢で働くさまざまなポジションの人たち、その周囲の人たちが役職と役名のテロップ入りで次から次に登場。国家の一大事に際しそれぞれの立場から発言し、行動していく。『シン・ゴジラ』(総監督:庵野秀明/2016年7月29日公開)が、この手法を踏襲したことは有名なエピソードだろう。

 もうひとつ、日本映画として初めて昭和天皇の姿を映像化した点は興味深い。演じたのは八代目松本幸四郎(のちの初代 松本白鸚/二代目松本白鸚・二代目中村吉右衛門の父親)。とはいえ、セリフはあるものの顔がハッキリ映るシーンはなく、ボンヤリとした登場の仕方だった。

 なお、終戦から70年の2015年には、同タイトルの映画が公開されている(監督:原田眞人)。この作品はオリジナルとは対照的に、昭和天皇の人間像をかなり踏み込んだ形で描写した。それを静かに演じた本木雅弘は高く評価され、各映画賞で助演男優賞を得ている。

『日本のいちばん長い日』のヒットで、東宝は以後も「8.15シリーズ」と称し、太平洋戦争をモチーフとした作品を定番化させていくのだった。

07 史上空前の任侠オースター大集結の反戦映画!?
『あゝ決戦航空隊』

監督:山下耕作 配給:東映 公開:1974(昭和49)年9月14日

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 1970年代半ば、東映は『仁義なき戦い』(監督:深作欣二/1973年1月13日公開)が当たって以来、いわゆる「実録路線」を看板コンテンツとしていた。

 そんな頃に製作された本作は、『仁義なき戦い』の脚本家・笠原和夫が、同シリーズを第4作『~頂上作戦』で降り、「天皇の戦争責任」をひとつのテーマに新たに取り組んだ作品だとされる。といっても、「天皇の戦争責任」は決して露骨に押し出されている訳ではなく、表向きはあくまで、従来の戦争映画の体裁を取っている。

 鶴田浩二、池部良、渡瀬恒彦、金子信雄、梅宮辰夫、山城新伍、松方弘樹、小林旭、安藤昇、北大路欣也、菅原文太(クレジット順)といった東映ファンにおなじみの面々が勢ぞろい。といっても、これだけのメンバーがひとつの作品に出演した例はほかにない。

 また、若年層を意識したキャスティングとして、当時人気絶頂のアイドルだった西城秀樹が特攻隊員の役で出演している。ただし、他の出演陣とのカラミはナシ。忙しいスケジュールをやりくりし、短時間で撮影した背景がうかがえる。

 163分の長尺で、主人公は特攻隊の創始者のひとりとされる大西瀧治郎(鶴田浩二)であり、その盟友として当時は政財界の黒幕・児玉誉士夫(小林旭)が実名で登場する。蛇足ながら、映画公開時は知る人ぞ知る人物だった児玉はその後、ロッキード事件で全国的に知られる存在となるのだった。

08 東映を出し抜き、東宝が放った年間ナンバー1作品
『連合艦隊』

監督:松林宗恵 配給:東宝 公開:1981(昭和56)年8月8日

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 70年安保闘争から約10年、80年代前半の日本映画界でなぜか戦争映画ブームが起きていた。きっかけとなったのは、明治天皇や日露戦争を描いた東映の『二百三高地』(監督:舛田利雄/1980年8月2日公開)のヒットだ。東映は二匹目のドジョウを狙ったが、一足早く「8.15シリーズ」で実績のある東宝が、この『連合艦隊』の製作を決めた。

 本作は、太平洋戦争における連合艦隊の興亡を時系列で追っていくもので、日独伊三国軍事同盟の締結から始まり、戦艦大和の壮絶な最期で終わる。山本五十六ら著名な軍人も登場するが、実質的な主役となるのは、永島敏行、金田賢一、中井貴一らが演じる架空の名もなき若者たちである。

『連合艦隊』は1981年の日本映画でナンバー1の興行収入・動員数を記録。カルチャー的にはバブル経済期への助走期間ともいえ、ポップなものが好まれたこの時代に、戦争映画がはやったのは不思議な現象ともいえる。

09 『仁義なき戦い』の脚本家による開戦から終戦までを描いた大作
『大日本帝国』

監督:舛田利雄 配給:東映 公開:1982(昭和57)年8月7日

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 東映が『二百三高地』に続けと製作したのが本作だ。もともと1981年の公開を予定したが、一足早かった東宝の『連合艦隊』との競合を避けるために1年遅らせたという経緯がある。

『連合艦隊』に終戦の場面はないが、こちらは太平洋戦争全体をトレースし、終戦後の焼け野原でたくましく生きる人々の姿までが描写されている。こちらも『あゝ決戦航空隊』の笠原和夫の脚本であり、戦争を賛美した軍国主義的な映画かと思わせながら、実はここでも天皇の戦争責任を問うようなスパイスが巧妙に盛り込まれているという評価もある。

10 勝新太郎、沢田研二、ロバート・レッドフォードの競演作だった!?
『戦場のメリークリスマス』

監督:大島渚 配給:松竹、松竹富士、日本ヘラルド 公開:1983(昭和58)年5月28日

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 大手映画会社による2本の大作戦争映画が大ヒットを記録していた頃、ある意味でこれを強く意識していた映画監督がいた。大島渚である。

 大島が1970年代より構想していた『戦場のメリークリスマス』は資金集めが難航したため、撮影スケジュールが定まらずキャスティングも難航した。
 
 実際にビートたけしが演じたハラ軍曹役には緒形拳、勝新太郎、坂本龍一が演じたヨノイ大尉役には三浦友和、沖雅也、沢田研二らが候補に挙がったとも。また、デヴィッド・ボウイの出演も当初から決まっていたわけではなく、ロバート・レッドフォードの名前が取り沙汰されたりもしたという。

 どの組み合わせでも、「それはそれで観たかった」という声もありそうだが、大島自身、キャスティングにあたって「『連合艦隊』と『大日本帝国』に出た役者だけは使いたくなかった」と発言していることを確認しておきたい。

 インドネシアのジャワ島での、日本軍俘虜収容所における男たち(女性の出演者はゼロ)の人間関係を描いたもので、 戦闘シーンはナシ。日本、英国、オーストラリア、ニュージーランドの合作映画にして、撮影は南太平洋にあるクック諸島のラロトンガ島で行われた。

 当時、ビートたけしは、この作品について突き放すような発言もしていたが、 『戦場のメリークリスマス』がのちの“世界のキタノ”にとって初めての国際的な映画体験だったことは間違いない。

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 平成最後の夏、酷暑を避け、自宅でじっくりとこれらの映画を鑑賞し、“あの戦争”に思いを馳せてみるのはいかがだろうか?

(文/ミゾロギ・ダイスケ)

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