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夏に発熱した子どもは温めないで! クーラーは子どもにこそ必要。

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 毎日、暑い日が続いています。みなさん、熱中症には気をつけてお過ごしくださいね。最近「『体調が悪く、熱が出ている子どもをクーラーのない部屋で寝かせたほうが、汗をかいて早く治る』と身近な人に言われたけれども、母の私としてはそんなこと、可哀想でできない」というツイートを複数見かけて、大変心配しています。

 この問題は「なぜ熱が出るのか」「汗をかいたら早く治るのか」「子どもにクーラーはよくないのか」の3つに分けることができます。最初に、「なぜ熱が出るのか」について説明しましょう(プロローグでご紹介した『小児科医ママの子どもの病気とホームケアBOOK』(内外出版社)に詳しく書いているので、気になる方は手にとってみてください)。

 実は、ウイルスや細菌、真菌などの病原微生物は、常に体に入り込んでいます。病原微生物が体の防御機構をくぐり抜けて一定量以上入ってくると、血管内皮細胞・単球・マクロファージなどの細胞が伝達物質を出して、脳の体温調節中枢に病原微生物侵入の非常事態を伝えます。温熱中枢は、体の温度を上げようとします。体温が高い方が病原微生物を追い出すための免疫機能がうまく働き、風邪などのウイルスは高い温度に弱いためです。

 具体的な方法として、寒気を感じさせる(衣服を着させる)、筋肉を震わせて熱を作る、汗を減らす、手先・足先の皮膚の血管を収縮させるというものがあります。「熱があるのに手足が冷たくて色が悪いんです」と外来で保護者の方に言われることがありますが、それは普通のことです。体が末梢の血管を締めて深部体温を上げようとしているからです。手足の皮膚の血管が広がっていると、熱がそこからどんどん逃げていきます。覚えがある方は多いと思いますが、眠くなると子どもの手足は温かくなりますね。眠るためには深部体温を下げなくてはいけないので、手足の血管を開いて熱を放散させているのです。

 ここまで説明すれば、「汗をかいたら早く治るのか」の答えもお分かりかもしれません。汗をかいたら熱が下がってしまいます。ですから体が熱を上げようとしているときには汗をかきません。病原微生物の危機が去ったら、汗が出て手足の冷たさがなくなり、体温が下がるのであって、汗を出せば体調が良くなるのではありません。原因と結果が逆です。

 最後にクーラーについてです。7月に起きた、小学校1年生の男児が熱中症で亡くなる事故を機に、教室にクーラーの設置を求める声が上がるようになりました。しかし中には「子どもにクーラーはよくない」という反対意見もみられます。果たして本当に「子どもにクーラーはよくないのでしょうか?

 私は、むしろクーラーは子どもにこそ必要だと思います。生きているうちは常に体温が作られます。そして実は、体重あたりの熱産生量は、大人よりも子どもの方が多いのです。さらに子どもは循環血漿量(じゅんかんけっしょうりょう)、つまり体中をくまなく巡り、温度調節の機能も持つ血液が少ないので、大人よりも熱を外に逃がす機能は低いのです。末梢血管を広げても放散できる熱が、より少ないからですね。それだけではありません。環境の温度が高いあるいは低いと、体の小さい子どもの方が温まりやすく冷えやすくなっています。大人が暑いと感じているとき、まだお話しないくらい小さな子どもは、実はもっと暑さを感じていることでしょう。

 具合が悪く熱がある子どもを涼しい環境に寝かせるのが望ましいのは、いま述べたような理由だけではありません。そうしないと危険だからです。

 私達は息をしているだけで水分が失われます。また、特別に汗をかかなくても皮膚から水分が飛んでいきます。こういう呼気と皮膚からの水分喪失を不感蒸泄(ふかんじょうせつ)といいます。年齢が小さいほど、体重あたりの不感蒸泄量は大きく、発熱時はさらに不感蒸泄が増加します。自分で水分を十分に摂れない子どもが発熱し、暑い部屋にいると脱水・熱中症になりやすいのです。クーラーを使わないことにメリットはなにもなく、むしろ危険ですらあります。

 もしも、クーラーのない部屋で温めて病気が治るなら、病院は患者さんのためにそうするでしょう。でも、みなさんが受診したりお見舞いに行ったりしたときに、夏の病院は汗をかくほど暑いでしょうか? おそらく25−27度くらいに保たれているはずです。数年前に私はインフルエンザにかかりましたが、高熱で身の置き場がないくらいつらいときに、部屋が暑かったらまさに灼熱地獄だったと思います。

 医療機関である病院でもクーラーは使っています。大人ですら高熱を出したとき、クーラーのない部屋はしんどいのです。冒頭のツイートにある「クーラーのない部屋で寝かせたほうが早く治る」と考えた人は、「冷えは体に悪いから、きっと病気をしたときも温めたらいいんじゃないか」と感覚的に思ったのかもしれません。でもこれまでお話してきた通り、こうした誤解は大変危険です。病気をしたときはいっそう、水分をたくさん摂りクーラーを使うようにしてくださいね。

森戸やすみ

小児科専門医。一般小児科、NICU(新生児特定集中治療室)などを経て、現在は世田谷区にある『さくらが丘小児科クリニック』に勤務。朝日新聞アピタルで『小児科医ママの大丈夫! 子育て』を連載中。Wezzyでも。医療者と非医療者の架け橋となるような記事を書いていきたいと思っている。

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