
生き延びるためのマネー/川部紀子
こんにちは! ファイナンシャルプランナーで社会保険労務士の川部紀子です。
筆者の新刊が発売となりました。タイトルは『まだ間に合う 老後資金4000万円をつくる!お金の貯め方・増やし方』(明日香出版社)です。老後資金と書かれていますが、できるだけ若いうちに読んで行動に移した方は本当にラッキーだと思う、そんな一冊になっています。
先月末から今月にかけて「長期金利」が話題です。日本銀行が定期的に行っている会議「金融政策決定会合」の7月末の話し合いで、長期金利の上昇を認めると決めました。実際に長期金利が1年半ぶりの上昇となったことは、ニュースなどで見聞きした人もいるのではないでしょうか。
そこで、今日は「長期金利」についてざっくり簡単に解説をしてみたいと思います。
長期金利ってなに?
お金の貸し借りをする期間が1年以上の場合、その金利を「長期金利」といいます(1年未満なら短期金利です)。この貸し借りの当事者は、個人、企業、金融機関、国など問いません。これが「長期金利」の大原則の説明になります。
でも、実際には、国が「10年後に返します!」という約束の借金をするときの利回り(新発10年国債の利回り)が、長期金利の代表的な金利とされています。ニュースに出てくる「長期金利」はこの数字のことだと思って問題ありません。ひとまずは「長期金利と言えば、新規の10年国債!」と覚えておきましょう。
この長期金利は、景気が良い時に上昇すると言われています。経済や景気の体温計という表現もあるくらいです。個人的には、体温が上昇すると具合が悪いのでは? と思うのですが……。
2018年夏 長期金利が上昇!
長期金利は景気の影響だけでなく、国債の需要や供給、物価などさまざまな要因で動きます。2018年7月中旬から長期金利が上昇傾向にありましたが、そこに7月末の金融政策決定会合で「長期金利の上昇容認」という決定があり、8月上旬に長期金利が1年半ぶりの上昇となりました。
実は今までは長期金利は0%に抑え込まれていました。その理由は「誰もがお金を借りやすくするため」です。
金利をゼロにすることで企業は銀行からお金を借りやすくなります。企業がお金を借りて新しい設備を買うなど事業を拡大することで、結果として賃金アップや雇用の拡大などが起こるかもしれません。企業だけでなく個人がお金を借りて住宅を購入すれば、家具や家電などの買い物にも繋がるでしょう。お金を借りやすくすることで、お金の動きを活発にして日本の景気よくしていこうという狙いがあったわけです。
でも、悪いこともありました。お金を貸す側の銀行にとっては、金利で儲けることが非常に厳しくなってしまいます。銀行はとても苦しい思いをしているわけです。今回の長期金利の上昇を認めるという決定は、こうした問題点も大きくなっているので、今までと少し流れを変えようというものなのです。
長期金利上昇時の注意点は?
長期金利の上昇が一般生活者にどんな影響があるのか。これがもっとも気になるところかもしれません。
先に書いたように、長期金利を0%に抑え込んでいたのは、金を借りやすくするためでした。長期金利が上昇すると、お金を借りるときの金利は上がることになります。
企業はもちろんですが、個人にとって影響が大きいのは住宅ローンの金利です。早速8月の住宅ローン金利を引き上げた銀行もありますし、今後も上昇傾向となれば、当然ながら他の金融機関も追随することになるでしょう。
金利が上がるときのスピードはとても速いので、これからローンで住宅を購入する方、住宅ローンの借り換えをする方は注意が必要です。今まで通り歴史的に低い金利で借りられるとは限りません。
こういった今までと少し違う流れを生み出したことで、景気の拡大、賃金の上昇など実生活が潤うような動きに繋がることを期待したいですね。これからも、長期金利のニュースを見聞きしたら、この記事を思い出して注目してみてください。