一部企業が就活で「学歴フィルター」をかける理由と、就活システムの根本的な問題点

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現状の就活システムでは誰もが疲弊するばかり

 以上、学歴フィルターを使っている企業の立場になって考えてみたが、本当の問題は「定員の何十倍もの学生が受けに来るので全員には会えない」ことである。そしてそれは、「学生の就職活動の期間が長いので、学生が何十社も受けるから」なのである。学生は何十社も受け、企業は定員の何十倍もの学生の相手をするため、両者とも大いに疲弊することになる。

 結局就職するのは1社なのであるから、最初から「5社しか受けてはいけない」と決めてはどうか。たとえば各大学が「就職活動用の成績証明書を5通だけ発行する」と申し合わせれば良いだろう。そうすれば、学生が「1社は宝くじを買うつもりで有名企業を受け、1社は滑り止めを受け、残り3社は実力相応の本命企業を受ける」といった対応をとるであろう。

 ちなみに筆者が就職活動をしたのは昭和55年であったが、当時は比較的厳格に「10月1日採用活動解禁」という経団連のルールが守られていた。学生が受ける企業の数も限られていたので、企業側もわざわざ学歴フィルターをかけなくても対応できていた。学生は最初の数日で数社を受け、企業は定員の数倍程度から学生を絞り込んで内定を出せばよかった。お互いに楽だったのである。もちろん、数社とも不合格であった学生と、必要人数が採用できなかった企業は10月第2週に「第2ラウンド」を行ったわけであるが。

 当時と比べると、経団連の「睨み」が利かなくなり、「フライング」をする企業も多いようなので、当時のシステムは復活できないであろうが、上記のような新しいシステムを大学と企業が連携してつくり出すことが望まれる。

新卒の一括採用は時代遅れなのか

 ちなみに、「そもそも終身雇用制を前提とした新卒の一括採用は時代にそぐわない」という意見も聞かれるが、そう考える企業は中途採用をすればよいだけの話である。最近は、入社して3年以内に離職する若手社員も多いようなので、離職希望の若手社員の中から採用すればよいのである。転職紹介ビジネスも最近は盛んであるから、採用活動もそれほど難しくなかろう。

 実際には、終身雇用を前提とした新卒一括採用がよいと考える企業が多いから現状が維持されているわけであって、そうした企業に「考え方を改めろ」と言うわけにもいかないので、現状が持続するという前提で対応策を考えるしかないであろう。

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