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綾瀬はるかが伝え続けてきた戦争証言と平和への思い

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 「綾瀬はるか「戦争」を聞く〜地図から消された秘密の島〜」では、戦時中に毒ガスの製造所があった島・大久野島(広島県)を取り上げた。毒ガスの使用は国際条約で禁止されていたため、島の存在は地図から消され、徹底的に隠されていた。

 番組では、この島で、びらん性の猛毒・ルイサイトを使った毒ガスの研究を行っていた男性にインタビューを行った。この工場でつくられた毒ガス兵器は実際に中国で使われたものだ。

 取材に応じた男性は、いまでもルイサイトを製造するための方程式を忘れることができないという。方程式を忘れるということは、過去に自分が犯した罪を「なかったこと」にしてしまうことでもあるからだ。

 男性は綾瀬はるかに向かって<この方程式は絶対に忘れてはならない。忘れることができない。それはなぜ。本来、勉強というのは、人間が生きるために勉強する。私は、生きるために勉強したのではなくて、中国人を殺すために毒ガスをつくった。いわゆる、犯罪者><方程式を忘れるというのは、犯罪の根拠を忘れる、犯罪の根拠をないことにするということになるわけですから、絶対忘れてはならない>と語る。日本側の加害責任を含めて反省し、そのうえで平和を希求することの重要性を語ったのである。このような証言が放送されることは、歴史修正主義が跋扈する昨今の言論状況のなかにおいて、非常に意義深い。

 終戦から73年が経ち、実際に戦争を知る世代が鬼籍に入りつつある。それと連動するように、日本社会のなかで戦争への忌避感が薄らぎつつあるのは疑いようのない事実だ。

 そんななか、戦争の実相を証言として残し、語り継ぐのは、後世のために非常に重要な仕事である。『綾瀬はるか「戦争」を聞くⅡ』(岩波書店)におさめられた膳場貴子との対談のなかで、綾瀬はるか自身もその重要性を語っている。

<なんていうか、今ここでこのお話を聞いて記録させてもらわないと、もう二度と聞けないかもしれない、とても大事なことを私は教えていただいているんだってことに気がついて。それに、本当におつらいのは話してくださっている皆さんのほうなのですから、私が弱音を吐いてはいけないなと>

 綾瀬はるかは同対談のなかで<戦争は恐ろしいものだということを私は伝え続けたいと思っています>とも語っている。「綾瀬はるか「戦争」を聞く」は末永く続けていってほしいものだ。

(倉野尾 実)

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