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障害のある兄を椎名桔平、兄に苛立つ弟を藤原竜也が演じる『レインマン』のリアリティ

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舞台「レインマン」8/23まで全国巡業中

 劇場へ足を運んだ観客と演じ手だけが共有することができる、その場限りのエンターテインメント、舞台。まったく同じものは二度とはないからこそ、時に舞台では、ドラマや映画などの映像では踏み込めない大胆できわどい表現が可能です。

 8月もすでに半ば。この時期の風物詩のひとつは、チャリティと感動をうたい文句にした24時間のテレビ番組です。賛否両論ありますが、普段は意識することの少ない障害者の存在を認識する機会であることは確か。またフジテレビ系でも、サヴァン症候群という知的障害の症状を持つ青年が主人公のドラマ「グッド・ドクター」を放送中です。

 そこで本欄でも、同じサヴァン症候群をテーマにした舞台「レインマン」を取り上げたいと思います。

 他者とのコミュニケーションがむずかしい自閉症でありながら、驚異的な記憶力をあわせ持つサヴァン症候群という症状が世の中に深く知られたのは、1988年の映画「レインマン」がきっかけでしょう。ダスティン・ホフマントム・クルーズが主演し、アカデミー賞を受賞した同作は、2008年にロンドンで舞台化。現在、その翻訳上演が、椎名桔平藤原竜也の主演で全国公演中です。

 高級中古車専門のディーラーを営むチャーリー(藤原竜也)の下へある日、長く疎遠だった父の訃報が届きます。母親は幼いころに亡くなり、厳格な父への反発から16歳で家出したチャーリーは、複雑な思いを抱えながら、遺産をあてに故郷へ。

 しかし彼に譲られたのは父とケンカ別れする原因になったクラシックカーとバラ園のみで、膨大な資産の大半は、彼が存在を知らなかった17歳年上の兄で、サヴァン症候群と呼ばれる自閉症患者のレイモンドの手に渡ると聞かされます。

障害者の家族だから思うこと

 経営の思わしくない会社のためにも正当な額の財産がほしいチャーリーは、レイモンドを説得するため、彼を入所している施設から連れ出します。しかしある種の知能は高くてもコミュニケーションが困難な兄との旅に、いら立ちは募りーー。

 知的障害者にまつわる表現のなかで、映画の公開時期は許容範囲だったかもしれませんが現在は自粛されているのが「知恵遅れ」という言葉です。初めてレイモンドと対面して困惑し、医師に質問するときのチャーリーが発したのが「知恵遅れか」という質問。健常者をはるかに超える数字の認知能力や記憶力を見せつけているのに、食事のメニューやおかずの数、消灯時間や着る物など生活のすべてに対して強いこだわりを持つことに怒り、「知恵遅れみたいなバカな真似はやめてくれ」と叫ぶなど、本作では遠慮なく使用されています。

 私事ですが、筆者には姉がおり、重度の知的障害を持っています。個人的な意見ですが、第三者からの「知恵遅れ」との表現には、昨今の風潮を知らないんだなとしか思いませんが、障害者の身内が発する「知恵遅れ」には、少しだけ特別な思いがあります。「遅れ、というくらいだから、そのうち追い付くんじゃないか」という、すがるような希望を込めた意図的な誤解や思い込みをしたいんじゃないか、と。これは実際、姉の障害が判明したときの、筆者の父の発言です。

 藤原が演じるチャーリーの「知恵遅れ」というセリフは、その筆者の父の発言を連想してしまったくらい、レイモンドの行動への困惑といらだちがリアルでした。

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フィナンシェ西沢

新聞記者、雑誌編集者を経て、現在はお気楽な腰掛け派遣OL兼フリーライター。映画と舞台のパンフレット収集が唯一の趣味。

twitter:@westzawa1121

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