サマータイム導入は人命を奪う トンデモ精神論で乗り切れない現実

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 また、船田氏はサマータイム導入にともなうシステム変更について<律儀で真面目な国民ならば十分乗り切れるはずだ>と評しているが、そんなに簡単なものではない。

 「地球環境と夏時間を考える国民会議」の報告書によれば、サマータイムにあわせた改修費は、ハードウェア・ソフトウェア合わせて1000億円かかるといわれている。ただ費用がかかるだけではなく、切り替え時期にはトラブル対応などに追われるケースも多数発生すると思われ、担当する多くのエンジニアへの負担も心身ともに大きいものになるだろう。家庭用ビデオデッキの時間を少しイジって変える程度のものではないのだ。

 さらに、船田氏は睡眠障害をはじめとした健康被害の懸念も<個人の心構えにより、多くは解消されるはずだ>としているが、言うまでもなく、そんな単純な話ではない。

 サマータイムの導入により起こる健康被害は「最近なんだか眠れなくて……」程度で済む話ではないのだ。

 それは、実際にサマータイムを導入している国の事例からも明らかだ。一般社団法人日本睡眠学会が発行している「サマータイム 健康に与える影響」によると、スウェーデンではサマータイムが始まった週の心筋梗塞発症のリスクが5%上がるというデータが出ている。

 また、ロシアは1981年からサマータイムを実施していたが2011年に廃止。その理由のひとつが時間を切り替える時に心筋梗塞で救急車が出動する回数が増えたからだとされている。

 こういった負荷は、健康な人はもとより、子ども、高齢者、持病をもっている人といった健康弱者にはより強い影響をおよぼす。サマータイムの導入は「命」に直結する問題でもあるのだ。

 以上のことからわかるのは、船田氏がサマータイムに関していかに不勉強か、そして、深く考えていないか、ということである。

 いや、それは船田氏だけの問題ではない。自民党全体の問題ともいえる。

 サマータイムは当初、2019年と2020年の2年間のみの限定導入といったかたちで運用される予定だったが、前述したシステム変更のコストに見合う成果が見込まれないなどの指摘を受けて、限定ではなく恒久的なサマータイムの導入を考えるとの案が浮上したと報じられている(8月8日付ニュースサイト「スポーツ報知」)。要は、関係各所へのヒアリングもまともに行わず、見切り発車で出てきた案ということだろう。あまりにも杜撰な話である。

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