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放置されてきた中高年引きこもりの実態を初調査 8050問題の食い止めになるか?

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Thinkstock/Photo by KatarzynaBialasiewicz

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 80代の親が50代の引きこもり状態にある子どもを養う「8050問題」が深刻化している。昨年12月、北海道札幌市で長年引きこもっていた娘(52)と2人暮らしの母親(82)が寒さと飢えにより死亡。その後、1人になった娘も衰弱死するという事件が起きた。数年前には、広島県福山市で父親(77)が20年以上引きこもり状態の息子(44)を殺害。父親は「息子から『殺してくれ』と頼まれた」「自分も年を取り、息子の将来を悲観して殺した」と供述したという。

 厚生労働省が発表した「平成29年 国民生活基礎調査の概況」によると、「65歳以上の者がいる世帯の世帯構造」について、「親と未婚の子のみ世帯」の平成元年の割合は11.7%だったが、平成29年にはほぼ倍の19.9%まで上昇した。当然、「未婚の子」の多くが引きこもりというわけではないと思うが、高齢の親と中高年の子どもによる凄惨な事件が今後も増える可能性は十分考えられそうだ。

 政府はこの現状にようやく重い腰を上げた。今年11月に初めて40~64歳の引きこもりの人の実態調査を実施するという。引きこもりの調査自体はこれまでも実施されてきたが、多くが15~39歳を対象とするもので、40歳を過ぎると“引きこもり”というカテゴリーにさえ入れず、我々の目の届かない“社会の闇”へと追いやられてしまっていた。政府は調査後、支援メニューを検討するようだが、ぜひ“調査止まり”にならないことを期待したい。

地方ではすでに取り組みが行われている

 8050問題に危機感を抱き、本格的に中高年の引きこもり対策に乗り出している地方自治体は少なくない。北海道苫小牧市では今月から、引きこもりの人や家族、支援者などが集まって情報交換ができるスペース「ひきこもりサテライト・カフェ」を始動。引きこもりの人を家族が支えるのではなく、地域全体でサポートする仕組みづくりを目指しているようだ。

 秋田県大仙市では今年10月から、50代前半までの引きこもり状態にある人を対象に、家庭を専門のサポーターが訪問し、相談や就労支援などに取り組みを実施する。サポーターが対象者の自己肯定感を高め、生活リズムの回復を促し、地域の行事や職場体験への参加につなげるのだという。

 現在、日本は深刻な人手不足である。先月放送された『AbemaPrime』(abemaTV)の中で、引きこもり問題を長年取材している池上正樹氏は“40歳以上の引きこもりは推定100万人以上いる”と話していた。長年引きこもり状態だった人が、外に出たとしてもすぐに会社の戦力になることは考えにくいが、国内には100万人以上の“人材”が眠っているとの見方もできるというわけだ。しかし、メンタル面も含め、丁寧できめ細かなフォローがなければ、その“人材”を活用することは難しいのではないか。中高年向けの職業訓練校の充実化や、中高年引きこもりの人を採用した企業に助成金を支払うなどの、政府の積極的な介入も当然必要になってくる。

 

▼引きこもりに特化した専門窓口「ひきこもり地域支援センター」
各都道府県の設置リスト

宮西瀬名

フリーライターです。ジェンダーや働き方、育児などの記事を主に執筆しています。
“共感”ではなく“納得”につながるような記事の執筆を目指し、精進の毎日です…。

twitter:@miyanishi_sena

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