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保育園付き大規模マンションを期待するこれだけの理由

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Thinkstock/Photo by leolintang

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大都会が抱える待機児童問題

 大都会を中心に、保育園の不足が続いていて、待機児童がいつまでもゼロにならない。大都会では、保育園を建設する用地の取得費用が高いことに加え、保育園児の声などが騒音であるとの近隣の苦情もあり、立地が難しいようだ。加えて、大都市は賃金水準が高いので、待遇によっては保育士を募集しても必要人数が集まらないとも聞く。

 こうした問題を乗り越えて保育園をつくると、今度は保育園がないからと働くことを諦めていた「隠れ保育園希望者」が次々と表面化したり、近隣地域の待機児童(および保護者)が引っ越して来たりするので、いつまでも問題が解決しない、ということのようである。そこで筆者が期待しているのが、タワーマンション等の大規模マンションに併設される無認可保育園である。

住民優先の保育園でマンションの人気が高まると期待

 大規模マンションの建設時に、最初から保育園を設計図に入れておけば、用地取得の問題は解決する。設計図を見てから入居する人々は、「保育園児の声がうるさい」と苦情を言う資格はないからである。無認可保育園にすることで、高い給料で保育士を雇うことができるから、保育士不足の問題も生じない。保育士の高い給料に見合った高い保育料を徴収すれば良いのである。当然、延長保育等々も選択肢となろう。

 無認可保育園にすることの最大のメリットは、入園児を住民優先にできることである。そうすることによって、マンションの入居希望者が増え、マンションの価値が上がる。分譲なら高く売れるし、賃貸なら高く貸せる。そこでデベロッパーは利益が確保できるので、保育園の利用料についてはそれほど高くならないかもしれない。

 保育園だけではなく、小学生を放課後に預かる学童保育施設の併設も、要検討であろう。それにより、ますますマンションの価値が高まり、デベロッパーの利益が増える可能性も高くなるからである。賃貸の場合、「子育て期間中だけ、賃料こそ割高だが育児に関して安心できるマンションに居住し、子育てが終了したら割安な物件に引っ越す」ことが容易になろう。

 分譲の場合でも、保育園児から学童までの12年間を安心して過ごせるなら、割高でも不満はなかろうし、中学校入学に合わせて転売するとしても保育園と学童の権利付であれば、高く売れる可能性もあろう。もちろんその頃の社会も保育園不足が続いているという前提に立てばであるが。

正社員の女性が、思う存分働けるメリット

 保育料が高いと聞くと、「金持ちのための高級マンションと保育園だろう」と、反感を持つ読者もいるかもしれないが、冷静に考えていただきたい。

 筆者はセレブの話をしているのではない。夫も妻も正社員という普通の共働き夫婦の話をしているのである。正社員が出産を契機として退職し、数年後に復職した場合、正社員に戻ることはそう容易ではなく、非正規労働者として働くとすると、ずっと正社員でいた場合に比べて生涯所得が数分の1に減ってしまう、という試算もある。それならば、普通の正社員であっても、「高い保育料を支払ってでも正社員でいた方が良い」と言えるからだ。

 彼女たちが保育園に落ちたことで仕事をやめることになれば、彼女たち自身の所得が大幅に減るのみならず、日本経済にとっても貴重な労働力を失うことになり、それこそ大きな損失である。さらには、「保育園に入れず、仕事を辞めなければならないリスクがあるから、出産は諦めよう」と考える女性が多いのであれば、これも少子化を促進してしまう由々しきことである。

 彼女たちには、ぜひとも出産後も正社員を続けてもらい、高い生涯所得を稼いで、大いに消費して日本経済を元気にしてもらいたいものである。

幹部候補の女性には都心のタワマン付属保育園を

 優秀でバリバリ働いて管理職を目指すキャリア志向の女性にとっては、郊外の大規模マンションよりも都心のタワーマンションに併設された保育園が好都合かもしれない。彼女たちは夫婦共稼ぎで高収入であろうから、通勤時間を惜しんで都心のタワーマンションに住み、高い保育料を支払うことも可能であろう。

 また、多忙な夫婦のために備えるべく365日24時間の保育園が必要かもしれない。無認可保育園であれば、長時間の延長保育も可能であるから、その意味でも無認可が良いであろう。

  「男性でも女性でも、深夜残業や休日出勤は好ましくない。働き方改革が必要だ」というのはもちろん正論だが、働き方改革が広く実行され、大残業を強いられるビジネスパーソンが減るまでの間は、夜間も保育をすることが望まれよう。現実にそれを今、必要としている親子はいる。

行政の支援が望まれる

 上記のように、保育園付き大規模マンションは、女性が出産しても働けるようにという国策に合致したものである。ついては、行政の立場として、仮に規制緩和が必要であればお願いしたいし、税制優遇策などもご検討いただきたい。

 ちなみに、都心のタワーマンションは、エリア集中的に建ちすぎているので、今後は規制がかかる可能性を指摘する声もある。それに対応するためにも「保育園併設の場合は規制対象外」といった計らいがあってもいいだろう。

塚崎公義

久留米大学商学部教授。東京都生まれ。1981年、東京大学法学部卒業。日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。主に調査関連部署に勤務した後、2005年に銀行を退職して久留米大学へ。著書に『一番わかりやすい日本経済入門』『日本経済が黄金期に入ったこれだけの理由(9月24日発売予定)』(いずれも河出書房新社)など多数。

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