社会

育児も性差別もメディア問題もすべては地続き。価値ある情報をみんなで増やしていく/荻上チキ×森戸やすみ

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多様じゃない「多様性」

荻上 最近よくみる間違った情報ってありますか?

森戸 最近だと『成功する子は食べ物が9割』(主婦の友社)って本がいつもamazonで上位にランクインしているんですよね。私が成功した大人だったとして「あなたの成功は、9割は私の食事のおかげよ」って親から言われたらムカつくと思うんですけどね(笑)。子供は大人が思った通りに生きる、育つんだと思ってるんでしょうね。

荻上 「9割で決まるっていう本の9割はクズ」って記事を書いてください(笑)。

森戸 いいですね(笑)。「何歳で 決まる」って検索窓に打つと、本当にいろんな本が出てくるんです。親の欲望丸出しですごく恥ずかしい。

荻上 教育とか育児に関するエビデンスがどこまで進んできたかがわかる本は楽しく読めるんですけどね。もちろん統計はあくまで統計ですから、そこから統計的差別や排除になってはいけない。子どものニーズや状況に合わせてやるべきことも変わってきます。ときどきステ振りを強制的に極端にする親っているじゃないですか。

森戸 ステ振り?

荻上 ステータス振りです。特定の分野だけをひたすらやらせる親っていますよね。歌舞伎役者の息子が生まれてから、ずっと叩き込まれるみたいな。

もちろん、強制的ではない形でひとつの分野にステ振りするのはありだと思います。例えばうちの子供は学校に行っていないんですね。「集団行動が無理なら行かなくていいよ」って言っているんです。そのかわり、ステータスを振れるものが何かないかを一緒に探してます。ギターをずっと弾いていてもいいし、特定の分野の勉強をしてもいい。子どもの特徴にあわせて、何が出来るのか、何をしたいのか、どんなことを伝えればいいのかを考えるといいと思うんです。でも子どもじゃなくて、外側に正解を求める人ってけっこういるような気がするんですよ。

森戸 そうですね。特定のモデルにはめこんだ育児の話を前編でしましたけど、「多様性」「多様性」って言うわりには、いろいろな育児の仕方を認めないですよね。多様性っていっても、結局その人が認める範囲内での多様性でしかない。旧来の考え方のままの親が、子どもの個性や主体性を無視して「こういう子供のほうが将来的に有利だろう」って育てることには反対です。

育児情報の玉を増やしていく

荻上 杉田水脈議員の件で痛感したんですが、僕がパーソナリティを務めているTBSラジオ「Session-22」でこの問題を取り上げたとき、きっと他のメディアは取り上げないだろうなと思ってたんです。でもテレビや新聞で報道されたんですね。これっていろんな人達がこれまでに、セクシュアルマイノリティの人権について話したり、杉田議員の過去の発言の酷さをネットで指摘し続けてきた人がいたからこそのものだったと思うんです。「杉田議員 問題発言」って検索すれば、過去の発言を含めて問題のあるものがすぐに見れるようになっている。こういうチームプレイが重なってフェーズが変わっていくんだと思うんです。

森戸 地道にやっていくしかないわけですね。医者でも医療に関するデマをきちんと否定する人は増えていますし、お母さん自身が育児経験を漫画にする人がいたりして、いい流れもあると思うんですよね。デマが混じらないように丁寧に書いている漫画もあったりして。

荻上 「ネットは玉石混交の石ばかり」って言い方をしますけど、これからの課題は玉を増やしていくような、草の根的なサイト作り、SEO対策を丁寧にやっていくことなんだと思います。森戸さんの新刊も、おかしな本が棚に並んでいる本屋や図書館にひとつ玉を置いた一冊でしょう。そこから先は、Yahoo!だったりFacebookだったり、プラットフォームを提供している会社が動き出すことで、環境も変わっていく。関心のある方はぜひ手を上げてくださいって、呼びかけをしていくのが大切だと思います。
(構成/カネコアキラ)

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