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介護現場で横行するセクハラ・パワハラ被害「触られるうちが華」 利用者も事業者もおかしな「常識」を持っている

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Thinkstock/Photo by vadimguzhva

深刻な介護人材不足と「セクハラ」「パワハラ」問題

 今年、財務省官僚による「セクハラ」行為が顕在化し、同時に日大アメフト部による「パワハラ」案件なども露呈したことで、水面下で深刻化していた問題が、ようやく社会で明るみとなった。介護業界でも長い間、「セクハラ」「パワハラ」問題が存在していた。職員研修は実施されていたが、利用者と介護士という関係上、被害者側も委縮してしまい真に社会では受け止められていなかった。その意味では、世の中の流れはいい方向へと動き出しているといえよう。

 現在の深刻な介護人材不足問題は「セクハラ」「パワハラ」と絡んでいる。せっかく介護の仕事に就いたとしても「セクハラ」「パワハラ」の被害に遭い、「介護離職」となってしまうケースが少なくないからだ。

 厚労省のデータによれば(厚労省社会保障審議会介護給付費分科会『介護人材確保対策(参考資料)』2017年8月23日)、2015年度の介護職員の離職率は16.5%であったのに対して、産業全体では15.0%となっている。産業全体の離職率は、飲食業や建設業などといったように雇用の流動化が顕著な分野も含んでのデータであるため、介護職員の離職率のみで16.5%という数値はかなり高いといえる。

介護現場は「Wセクハラ・パワハラ」

 また、介護現場の「セクハラ」「パワハラ」問題は、要介護者や家族が加害者となる場合と、一般的に理解されている上司によるケースと、いわば「Wパワハラ・セクハラ」の要素がある。

 もちろん、サービス業においても「モンスター顧客」のような利用者側による「パワハラ」「セクハラ」に類似する事象は多々あるものの、介護現場と違って、常時そのような顧客と接する必要はなく、適宜、接触を回避することができる。

 しかし、あくまで加害者である要介護者は「介護」を受けなければならない社会的弱者であり、介護士は専門職として支援しなければならない責務がある。そのため、そう簡単に接触を回避できないのが現状だ。しかも、加害者側も、認知症などの病気を患っているケースを除き、自分が社会的弱者ということを自覚して、一種の甘えから「パワハラ・セクハラ」行為に至っているケースも珍しくない。

「セクハラ」は密室が多い

 筆者は、多くの卒業生を介護士として送り出しているが、要介護者やその家族によるパワハラ・セクハラが1つの要因として、介護の仕事を辞めて他の仕事に就いたケースの相談に何度かのることがある。これら事案の中で共通していることは、被害に遭うことが「密室」な場合が多いということだ。以下では、個人情報保護の関係から事例を脚色しながら主旨を変えずに述べていきたい。

 在宅ヘルパーに従事していた2年目の24歳の女性介護士は、73歳の要介護高齢者(要介護3)の自宅を訪問して、身体介護の「ケア」を週2回行っていた。自身では充分に移乗などができないため、入浴介助が主な目的であった。しかし、ケアの度に「君は、彼氏いるの? 彼氏とのセックス週何回? (ついでに身体を洗身してもらうので)一発、『手コキ』でぬいてくれない? 内緒で小遣い2000円支払うから」といった会話がなされたという。その介護士は、何とか話をそらそうとしたが、2カ月間耐えた後、我慢できずに「介護」の仕事を辞めてしまった。そして、派遣社員の事務職に転職した。

 しかも、そのような被害に遭ったことを上司の管理者に相談しても「相手は冗談交じりで言っているのだから、気にせず聞いていないふりをして仕事を終えたらいい! 相手は要介護3なのだから、いざとなれば女性であっても君が本気になれば『強姦』されることはない。上手くかわすのも専門職だからね!」といった対応をされたという。もし、この管理職が若い女性介護士の気持ちを汲み取り、しっかりとした対応をしていれば、「介護離職」には至らなかったであろう。

 個室型の介護施設で働いていた1年目の女性介護士が被害を受けたケースもある。この介護士は、オムツ交換の際に胸やお尻を、度々、利用者から触られる場面があったそうだ。その要介護高齢者は要介護4とほぼ寝たきり状態ではあったが、手や腕は動かすことが可能で、しかも頭脳明晰であった。しかし、言語は脳梗塞の後遺症から不自由ではあった。その介護士は22歳と若いこともあって、入社半年後に介護の仕事を辞めてしまい、一般OLとして企業へ転職してしまった。

 この介護士もまた、数度、上司の女性介護長や副介護長に相談しているが、「私が介助する時は触られない。まあ、年齢がいっているからだろうが、『触られる』うちが『華』だから、上手くかわして。誰でも若い介護士は、『通る』道だから」と、親身になって対応してくれなかったようだ。密室となる個室型の介護施設で、若い介護士が誰でも上手くかわせるとは限らない。

 さらに、要介護者家族による「パワハラ」問題も深刻だ。在宅ヘルパーに、「やってもらうことが当然」「自分は、毎日、親の介護で疲れているので、ヘルパーにはしっかりやってもらわないと」といった気持ちで、介護のやりかた、対応の仕方など「命令」口調で、ヘルパーに頼むケースも少なくないのだ。

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