連載

「クレジットカードで投資信託」投資の裾野が広がる可能性と大きな不安

【この記事のキーワード】
「クレジットカードで投資信託」投資の裾野が広がる可能性と大きな不安の画像1

生き延びるためのマネー/川部紀子

 こんにちは! ファイナンシャルプランナーで社会保険労務士の川部紀子です。

 お金の専門家などの間では今、日本で初めて「クレジットカードで投資信託ができるようになる」ことが注目されています。積み立てで行う投資信託については筆者も推奨しています。このことは新刊『まだ間に合う 老後資金4000万円をつくる!お金の貯め方・増やし方』(明日香出版社)にも書きました。また現金や銀行引き落としよりもカード派の筆者にとって、クレジットカードでの投資信託が今後どのように展開していくのかは非常に気になるところです。

 クレジットカードでの投資信託は9月から申し込みが始まるということで、今回は現段階での情報を解説したいと思います。余談ですが、筆者はクレカと略すことにどうも抵抗があるので(笑)、この記事では「クレジットカード」または「カード」で書き進めたいと思います。

丸井グループが証券会社を設立

 クレジットカードでの投資信託を始めるのは、丸井グループが新たに設立した「tsumiki証券株式会社」という会社です。丸井グループのクレジットカードと言えば、「エポスカード」。このエポスカードを使って、tsumiki証券から投資信託を購入できるようになるわけです。今年9月に申し込みが開始されます。

 購入できるのは、毎月3000円から50000円までの定額を積み立てるタイプの「投資信託」のみで、株、債券、FX、仮想通貨などの投資は対象外です。投資信託とは、一人ひとりは少ない金額でも、投資をしたいみんなのお金を集めて、日本や外国の株や債券や不動産などに投資する仕組みです。値動きのあるものにお金を回すので、当然ながら、投資したみんなのお金が増えたり減ったりします。どの株や債券を購入するかは、メーカーに相当する運用会社の人が選んでくれます。

 元々、毎月定額を積み立てして投資信託を購入するという考え方は人気でした。しかし今までは口座からの引き落としでした。今の時代、携帯料金、公共料金などもクレジットカード決済ができますから、どうして投資信託はクレジットカードで購入できなかったのだろう? という気もします。

 筆者も積み立てで投資信託を購入しているので、どうせ払うならカード決済でポイントやマイルが貯まったら嬉しいと感じます。でも、今回の動きは業界共通ではなく、あくまで丸井グループの新しい試み。つまり現段階ではエポスカードありきのお話でしかありません。

商品は4本の投資信託に限定

 通常投資信託を選ぶ際には、大量に並んでいる金融機関の商品ラインナップから、どの商品を買うか自分で選択しなければいけません。一覧表をみて戸惑う人も多いと思います。ところが、tsumiki証券はなんと次の4つの投資信託のみでサービスを開始するということです。

【商品名と運用会社】
・コモンズ30(コモンズ投信)
・セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド(セゾン投信)
・セゾン資産形成の達人ファンド(セゾン投信)
・ひふみプラス(レオス・キャピタルワークス)

 「少ない!」と思う人ももちろんいるかもしれませんが、「迷いが少なくて助かる」という人もいると思います。

 この4商品には共通点があります。それは、金融機関を通さずに、直接メーカーに相当する運用会社から投資信託を購入する「直販」というスタイルで人気を博した運用会社の商品という点です。これらはもともととても人気のある商品でもあります。

 また、全て「つみたてNISA」の対象商品に選ばれています。つみたてNISAについては以前「『つみたてNISA』は、投資の初心者に絶好の制度。先行き不安な将来に向けて、まずは検索を!」で説明しましたが、簡単に言えば税金がお得になる制度のこと。つみたてNISAを申し込んでいなかった人は、tsumiki証券を通じて申し込むことも可能です。

「カードで投信」への期待感や心配事

 筆者が特に注目しているのは、エポスカードがこのような試みを始めるということです。エポスカードと言えば、永年手数料無料で、社会に出て初めて手にするクレジットカードとしても人気なので、多くの人にとってたいへん身近なカードです。保有者の平均年齢は若く、投資未経験者が多いと思われます。

 私は「全国民の金融資産が預貯金だけであるようでは、この国の経済がダメになってしまうのでは? まずは、毎月無理のない金額を積み立て型の投資信託に回してみましょうか!」というのが基本スタンスなので、投資の裾野が広がる可能性に期待を感じています。

 一方で不安もあります。

 投資を始める前に、最低限、お金のことや投資のことについて勉強をしてほしいのです。義務教育で教わっていれば良かったのですが、残念なことに義務教育では、お金のことを教えてくれません。社会に出てからも勉強する機会がない人が大半です。

 今回の試みについても、「ちょっと儲かるからやってみなよ!」「怪しいやつじゃないから大丈夫だよ!」といった口コミで広がってはマズい! と思っています。儲かったからといって無理に投資額を増やしたり、損失を取り返したくて投資額を増やすことで、毎月の引き落としが苦しくなり、キャッシング、カードローン、買い物はリボ払いなどに手を出しては本末転倒です。

 投資のハードルが下がる分、同時に投資の意義や必要性、投資以前のお金に関するNG行為なども伝えていかなくてはならないと思います。

 窓口での説明もあるでしょうが、売り手の説明です。教科書通りの説明を聞いてもきちんと理解せずに投資信託を購入している人は山ほど見てきました。セミナーも開かれるようになると思いますが、運用会社の人のセミナーがメインでしょう。筆者も運用会社のセミナーには何度も足を運んでいますが、初心者向けセミナーであっても本当に初めての人はおそらく何が話されているのか、大部分の意味がわからないと思います。

 本当に投資のすそ野が広がるかどうかに注目しつつ、あらゆる場面で最低限の知識を伝える活動をしていかなくてはと思う次第です。

川部紀子

ファイナンシャルプランナー(CFP® 1級FP技能士)。社会保険労務士。1973年北海道生まれ。大手生命保険会社に8年間勤務し、営業の現場で約1000人の相談・ライフプランニングに携わる。その間、父ががんに罹り障害者の母を残し他界。自身もがんの疑いで入院する。母の介護認定を機に27歳にしてバリアフリーマンションを購入。生死とお金に翻弄される20代を過ごし、生きるためのお金と知識の必要性を痛感する。保険以外の知識も広めるべく30歳でFP事務所起業。後に社労士資格も取得し、現在「FP・社労士事務所川部商店」代表。お金に関するキャリアは20年超。個人レクチャー、講演の受講者は3万人を超えた。テレビ、ラジオ等のメディア出演も多数。新刊『まだ間に合う 老後資金4000万円をつくる!お金の貯め方・増やし方』(明日香出版社)が発売中。

twitter:@kawabenoriko

サイト:FP・社労士事務所 川部商店 川部紀子】

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。