政治・社会

救急車でのコンビニ立ち寄り クレームをそのまま受け入れる必要はない

【この記事のキーワード】
救急車でのコンビニ立ち寄り クレームをそのまま受け入れる必要はないの画像1

Thinkstock/Photo by gyro

 記録的な猛暑に見舞われているこの夏。8月も連日暑さが続いている。7月31日、総務省消防庁は、熱中症の症状で4月30日〜7月29日に救急搬送された人は全国で5万7534人になり、昨シーズンの5月1日〜9月30日の5万2984人を、この3カ月ですでに上回ったと発表した。

 このまま行けば、今シーズンの救急搬送数が過去最多になることは間違いないだろう。

 そんな中、7月26日、名古屋市消防局が公式ツイッターに「出動が連続し消防署に戻れない時は、救急車でコンビニ等に立ち寄り飲料水等を購入する場合があります。その際も、出動態勢は維持していますので、ご理解をお願いします」と投稿し、大きな反響を呼んだ。

 このツイートは8月7日の時点で6万2000件以上もリツイート(拡散)され、共感を示す「いいね」は7万8000件近くに上っている。

「救急車がコンビニにいるとびっくりする」

  名古屋市消防局の担当者によると、猛暑による救急出動が急増したため通常より救急隊を増やして対応しているものの、1日の出動が22件にもなった隊もある。以前に「救急車で買い物をしていた」との批判が市民から寄せられたこともあり、隊員の食事や水分補給の機会を確保するために投稿したという。

 これに対してツイッター上では「構わず立ち寄ってください」「救急隊の方の安全も大事」「頑張って」といった隊員達を励ますメッセージのほか「そんなことでクレームする人がおかしい」と疑問を投げかける声も数多く寄せられた。

 一方で、少ないながら否定的な意見もある。この件を取り上げたワイドショーで街の声を拾ったアンケートでは、48人中8人が、救急隊員が仕事の合間にコンビニに立ち寄ることに難色を示した。その主な理由は「救急車が停まっていると驚くから」というものだ。

 その放送を受けて再びネットは炎上。「こんなことも許してくれない人がいるなんて」「どれだけブラックなの?」と驚き、呆れる書き込みが相次いだ。

街で食事をするのに市民の理解が必要

  制服公務員が制服のまま食事を摂ったり、食べ物や飲み物を購入したりすることに、法律による一律のルールはない。

 東京消防庁は13年前の2005年から、休憩時間に食事ができなかった場合に限り、病院からの帰り道に救急車でコンビニエンスストアやファストフード店に立ち寄って食事を取ることを認めている。

 当時の報道によれば、同庁の出動数は1日2000件近いハイペース。救急車の位置はGPSで把握され、病院から戻る途中でも出場指令が出るため、消防署に戻らず4~5回連続で出動することも度々ある。

 同庁が、年間出動件数3500件を超える53隊について1週間調査した結果、1日平均2隊が3食のうち1食を取れない状態だった。そのため「原則署内」とされていた食事の規制緩和に踏み切ったという。

 同救急指導課は「救急隊の仕事は重労働で、食事をしないと隊員が体を壊してしまう。遊んでいるわけではないのでご理解を」とコメントした。

 最近の例では昨年4月、船橋市内の病院に「救急隊は連続する出動などのため、食事が摂れない場合があります。そこで……ご理解をいただいた病院の売店等で飲食物を購入し、飲食を摂ることにしました」という告知文が掲示され、ツイッターで話題になった。

 これを出したのは船橋市消防局。やはり年々増加する救急出動により、救急隊員が適正な時間に食事ができないことが多かったため、市内のいくつかの医療機関の協力を得て対応を行ったという。

 制服を着ていても救急隊員だって私たちと同じ人間。十分な食事と水分を摂らなければ激務をこなすことはできない。しかし、その「当たり前」へのクレームを想定して、わざわざ理解を求めなければいけないのが現実なのだ。

海外ではスタバが10%オフで商品を提供

  救急隊や警察官の制服や、緊急車両が日常風景に入り込むことへの過剰反応は、日本特有のものかもしれない。

 アメリカやヨーロッパでは、警察官や救急隊員が制服のままコンビニエンスストアに寄ったり、ファストフード店で食事をしたりするのはごく普通の風景だ。スーパーに消防士が買い出しに行けば、買い物客はみんな消防車に手を振る。

 体を張って人命救助に携わる彼らは市民から親しまれ、尊敬されている。公共の場にいると、店から特別サービスを受けたり、市民に列の順番を譲られたり、差し入れをもらったりすることも珍しくないという。

 今年3月に、スターバックスがイギリスとアイルランドの各店舗で、救命救急に携わる人々に、今後、永久に10%オフで商品を提供すると発表している。対象となるのは、救急車に乗り込む隊員、医療関係者、警察、軍のOB&OGなどだ。

 このニュースを報じた「HUFFPOST」日本版「スタバがコーヒーを永久10%オフにした職業とは?」によると、スターバックスの欧州エリアのリンチ副社長は「私たちの地域のために日々尽くしてくれているヒーローたちに感謝すべき時だ」とコメントを発表したという。

1 2

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。