しかし一方で、近年は日本でも若者を中心にファッション感覚でタトゥーを入れる人も増加しており、ラッシュガードなどでタトゥーを隠せば入場可能とするなど柔軟な対応を見せる施設も増えている。さらにタトゥー文化の浸透している外国人観光客の増加にともない、2016年には観光庁が規制の緩和を促す動きもみられる。2020年の東京五輪を見越しても施設側の対策が急がれるが、今回のりゅうちぇるへの反応を見るに、そもそも日本にはタトゥーへの精神的な偏見が根強いことの方が問題かもしれない。
脳科学者の茂木健一郎(55)は今回の騒動について、<いわれなき差別は撤廃するべきだ。インバウンドのお客さんも増えている今、放置すれば日本の国際的恥である>と主張し、タトゥーが入った人の公共施設の利用を制限することについては、<これは、(おそらくは偏見と無知に基づく)自分の感性を、パブリックな場の運用のルールにせよ、と主張していると解釈できる>と明確に批判している。
いまだに渦中のりゅうちぇるのインスタグラムについては賛否が寄せられているが、しかに茂木健一郎のいうとおり、論理的にタトゥーを批判することは難しいのではないか。ただ、やくざと刺青の歴史もあり、「タトゥーをいれている人は、悪いことをしそうで怖い」「暴力的なイメージがある」といったタトゥーへの恐怖感が偏見につながっている人もいるだろう。それを「時代遅れだ」の一言で変えることは容易ではなく、やや乱暴でもある。ともあれ、りゅうちぇるの騒動で議論が深まり、タトゥーに対する偏見の目が少しずつでも変わっていくことが望まれる。
(ボンゾ)
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