『キャプテン翼』の作者も普及活動に! 東京パラ五輪競技・ブラインドサッカーの魅力とは?

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「ブラインドサッカー」をご存知だろうか

「ブラインドサッカー」をご存知だろうか

 東京パラリンピック競技のひとつである「ブラインドサッカー」をご存知だろうか。

 この夏、ブラインドサッカーの映画化プロジェクトが始動した。あの『キャプテン翼』の作者・高橋陽一氏も協力する映画の名は『サッカーボールの音が聞こえる』

 クラウドファンディングで支援を募り、8月21日現在で約127万円が集まっている。

 まだ知名度は低いものの、迫力と魅力に溢れるスポーツであり、着実に認知され始めている。

ブラインドサッカーとは

 ブラインドサッカーは視覚障害のある選手を対象とするサッカーで、1チーム4人のフィールドプレイヤーとゴールキーパーで構成されている。ゴールキーパーは晴眼(視覚障害のない選手)、または弱視の選手が務めるが、フィールドプレイヤーは視覚障害のある選手でなければいけない。「ガイド」と呼ばれるメンバーがおり、相手ゴール裏に立ち、ゴールまで尾距離や角度、相手の情報などを声や音で伝える役割を担う。

 コートはフットサルと同じで、特徴的なのが両サイドに高さ約1メートルのフェンスが並び、サイドラインからボールがピッチ外に出ないように施してある。ボールは内部が特殊な構造で、「シャカシャカ」という音が出る仕組みになっており、その音を頼りに選手がプレーを行う。

 日本ブラインドサッカー協会は、多くの人に知ってもらうためにさまざまな取り組みをしている。

健常者もプレー可能。非日常を体験できる面白さがある

 ブラインドサッカーは、パラリンピックの公式競技種目としては、男女別に分かれており、視覚障害者しか出場できないが、普段の日本で試合をする分には男女混合もあり、健常者も出場できる。フィールドプレイヤーは全員アイマスクを着用するため、健常者も気軽に体験ができ、実際に試合に出場することも可能なのだ。見えない状態で音を頼りにプレーする体験は、視覚以外をフルに働かせる非日常体験だ。実際に健常者がブラインドサッカーの虜になり、チームに参加して活動することも少なくない。

 日本ブラインドサッカー協会に登録しているチームだけでも、関東を中心に21チームある。チームの中には視覚障害者の割合が少なく、健常者が多くプレーしている場合もある。

アイマスク着用でプレーする

アイマスク着用でプレーする

ブラインドサッカー普及を感じつつ、悩みの種は視覚障害者の参加率

 名古屋を拠点としたチーム「Mix Sense名古屋」は、選手18名(視覚障害者3名)サポートメンバー7名で構成されている。プレイヤー兼監督を務める土屋由奈さんに話を伺ったところ、健常者の興味、参加は年々伸びているそうだ。

 実際に企業、大学の学園祭や小学校、盲学校などを中心に体験会の依頼が尽きず、非日常を体験する健常者が増えている。

 一方で土屋さんは、視覚障害者の参加が伸び悩んでいると語る。

 「うれしいことに健常者が体験する機会、チームに参加してプレーする機会は増えてきました。ですが、本来の目的である視覚障害者が興味を持ち、体験し参加してプレーする割合が伸び悩んでいます。

 その背景には、視覚障害があることでそもそも自由に動きづらい(スポーツとして)人、危ない、怖いという先入観から、スポーツをポジティブに捉えることができないという経緯があります。また、視覚障害のある人(社会人)と出会う場所がなく、彼らとどうやって出会い、ブラインドサッカーの素晴らしさを伝えればよいのか模索しているところです。他のスポーツをしている視覚障害のある人へ声をかけることもありますが、掛け持ちは厳しいと言われてしまいます」

 土屋さんは、健常者への認知と普及に手応えを感じる反面、本来の目的である、視覚障害者が体験し、参加する機会を広めていくことが今後の課題だと考える。

健常者と視覚障害を抱える人たちが共存する意味

 土屋さんはブラインドサッカーを普及させるミッションへの想いを語る。

 「視覚障害もさまざまあり、大学までは健常者としてスポーツをしていたものの、事故によって失明し、ブラインドサッカーを知ってプレーするというケースもあります。

 ブラインドサッカー日本代表の加藤健人選手のケースで言えば、彼は小学校3年からサッカーを始めました。その後、遺伝性の病気によって徐々に視力が低下し19歳のときにブラインドサッカーを見学したことをきっかけにプレイヤーになりました。

 サッカーはもちろんのこと、スポーツを経験していた健常者が、事故やある日を境に目が見えなくなった経緯のある視覚障害者もいます。そんな人々と健常者がブラインドサッカーを通じて混ざり合う社会になり、生きがいになってくれればという願いがあり、普及活動をしています」

プレーヤー兼監督を務める土屋由奈さん(前列右から3番目)

プレーヤー兼監督を務める土屋由奈さん(前列右から3番目)

 前述のように、ブラインドサッカーは、パラリンピック以外は健常者も楽しむことができる。そこには見えない中で視覚以外をフルに働かせてプレーする、非日常体験が味わえる魅力もあるだろう。

 また、健常者として生活していたアスリートが障害を抱えてしまい、夢を諦めなければいけなくなったときの新たな夢や希望となる役割も担っている。

 ブラインドサッカーは、あえて健常者も参加できるスポーツだ。だから、健常者と視覚障害者が混ざりあって共にゴールを目指して戦う。スポーツを通じて一緒に夢を追いかけ、喜びを分かち合うーーそれこそが、スポーツ本来の醍醐味であり、楽しさなのだ。

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