
Thinkstock/Photo by fizkes
東京都教育委員会は8月25日から9月7日まで、都立高校生を対象に無料通話アプリ「LINE」で悩み相談窓口を試験的に開設する。受付時間は午後5~9時。10人の心理カウンセラーがチャット機能でやりとりし、悩みが深刻なケースには都教育相談センターなどとの連携も視野に入れているようだ。また、都はアクセス件数や相談内容を分析し、2019年度以降の本格導入を検討している。
LINEは高校生の間で最も使われているコミュニケーション手段であるため、気軽に相談してもらうことが期待できる。内閣府の調査によると、9月1日は子どもの自殺率が最も多く、その周辺日もこぞって高い。夏休み明けは子どもにとって、最もストレスや不安が高まる時期だ。都としては満を持しての取り組みと言える。
長野県では好感触
長野県で昨年9月、相談専用アカウント「ひとりで悩まないで@長野」を作成し、中高生に向けたLINE相談窓口を2週間ほど開設している。前年度1年間の電話相談が259件だったのに対し、わずか2週間で1579件のアクセスがあり、その3分の1に当たる547件の相談に乗ることができたという。「電話相談はハードルが高いけれど、LINEなら気軽に相談できる」との読みがあたったといえるだろう。
長野県の実績から、東京都でも多くの高校生から相談が寄せられることが予想される。10名の心理カウンセラーで充分かどうか不安が残るが、試みが開始したこと自体は大きな前進だ。
悩みを文字にするだけでも効果あり?
高校生と上手くコミュニケーションがとれなかったとしても、“チャットでやり取りすること”それ自体が、ストレス減少に大きく影響するかもしれない。テレビで中高生にも人気のメンタリスト・DaiGoが、東洋経済オンラインの記事で、自分の感情を書き出すことの効用を綴っている。一部を引用したい。
「自分の感情や思ったことをひたすら書き出すことを、エクスプレッシブ・ライティングといいます。エクスプレッシブ・ライティングを1日最低8分やるだけで効果があったという報告もあります」
「毎日、仕事が終わったあとや寝る前に、自分の感情を20分間書き出すだけで、メンタルが強くなり、ストレスが大幅に消えていきます」
感情を書き出すという点だけでも、LINE相談というやり方には価値がありそうだ。
ちなみに、「LINEじゃなくて直接話したい」と考えている人には、法務省が設けている無料電話相談「子どもの人権110番」(全国共通0120-007-110)の存在を知っておいてほしい。8月29日~9月4日は強化週間として、通常の受付時間を延長し、土日にも実施する予定だ。平日8時30~19時。土日(9月1、2日)は10時~17時。
そろそろ夏休みが明ける。今まさに学校が始まることに戦々恐々としている子どもは少なくないだろう。こういった国や地方自治体の取り組みはなかなか認知されにくく、「知ってたら利用してたのに」というケースもあるかもしれない。周囲の大人が積極的にこういった取り組みを教えてあげてほしい。