『巨人の星』はインドでも虐待アニメ――今、法律のウラとオモテで起きていること

【この記事のキーワード】

サバイバーの4つの属性

 虐待の多様性を示す例は、ほかにもある。例えば下記は、厚生労働省による虐待行為の4つの分類である。(『子ども虐待対応の手引き』より)

・身体的虐待
外傷を受ける行為や生命に危険のある暴行、意図的に病気にさせられる行為など

・性的虐待
性交や性的行為の強要、性器や性交を見せる行為、ポルノの被写体への強要など

・ネグレクト
衣食住を含め、健康・安全への配慮をしてもらえないこと。情緒的な欲求に答えてもらえないことなど

・心理的虐待
言葉で執拗に傷つけられる、無視、他の兄弟との差別、家庭内のDVを見せられることなど

 サバイバーからすると、こんな切ない名称が自分の過去にラベリングされるのは大変不本意なのだが、便宜的にサバイバー間の自己紹介などで使うこともある。それぞれの属性によって、苦しみの種類や乗り越えなければならない壁が少しずつ違うからだ。

 ではこの4類型を詳しく見てみよう。まず多くの人が想像しやすいのは、殴る蹴る、縄で拘束するなどの「身体的虐待」だろう。しかし、全体の比率として一番多いのは、言葉での脅しや過度の監視などによる「心理的虐待」(47.2%/2015年度厚生労働省調べ)である。

 食事を与えられない、病院に連れていってもらえないなど、育児放棄ともいえるのが「ネグレクト」。2004年に上映された是枝裕和監督による映画『誰も知らない』では、1988年に実際に発覚した「巣鴨子供置き去り事件」を扱ったことで話題になった。父が失踪、続いて母が蒸発した後も、親を待ちながら健気に生きるしかない4人のきょうだいの姿を描いた作品である。

 そして、もっとも世の中で認知されることが少なく、誤解を生じやすいのが、「性的虐待」だろう。レイプのような暴力的なものを思い浮かべる人もいるかと思うが、実際はセックスが何かも知らない女の子(あるいは男の子)に「愛情表現」や「しつけ」と称して行われることも少なくない。成長して行為の意味を知ったとき、彼ら彼女らの信じる世界がガラガラと音を立てて崩れ落ちてしまうのだ。

 以上の4類型は、個別にではなく「身体的」×「ネグレクト」など複合的に行われることもある。

こんな入り組んだ世界の中で、サバイバーたちは孤独に葛藤している。だからこそ、彼らは出会った同志を大切にし、属性に関係なくお互いを労おうとするのかもしれない。

 わたしが5年前にサバイバーのオフ会を開いたとき、参加者にはさまざまな虐待の経験者が混在しており、いまだ継続中の子もいた。そんな中、15歳のときに母親が蒸発したというカオルさん(仮名・当時30歳)は、初対面のみんなにお守りのような小さな巾着を手渡して回っていた。手作りと思しきその袋を開けると、中から小指の先ほどのかわいらしいダルマが顔を出したのである。

「ほら、七転び八起きって言うじゃないですか。その意味は――わたしたちならわかりますよね」。カオルさんはいたずらっぽく笑った。

法や定義はもちろん必要だ。しかし、生身のサバイバーの世界は、今この瞬間もどこかで力強く回っている。

1 2

あなたにオススメ

「『巨人の星』はインドでも虐待アニメ――今、法律のウラとオモテで起きていること」のページです。などの最新ニュースは現代を思案するWezzy(ウェジー)で。