昨年10月に発売された『大家さんと僕』(新潮社)は、お笑いコンビ・カラテカの矢部太郎(41)と、世話好きで上品な87歳のおばあさん=「大家さん」との同居生活が描かれたコミックエッセイだ。年の差40歳以上のふたりの日常的な交流に心が温まると反響が集まり、同作は累計発行部数50万部を超えるメガヒットを記録し話題沸騰中だったが、8月23日に突然「大家さん」の訃報が飛び込んできた。
8月23日にTwitterに投稿された矢部の文章は「『大家さんと僕』の読者のみなさまへ」というタイトルから始まり、「『大家さんと僕』というマンガのすべてであった大家さんがお亡くなりになりました」と大家さんの訃報が告げられていた。矢部は「もっと話したかったし、聞きたいこともたくさんありました」とつづり、さらに「大家さん」は季節のなかで8月がいちばん好きだったというエピソードを紹介して「僕にとっても8月は特別な月になりました」と、心の内を明かしていた。
また、8月26日の『24時間テレビ』(日本テレビ系)に出演した矢部は、「大家さんと僕がもしも出会っていなかったら、僕はひとりちいさなワンルームマンションでさみしいままで季節の過ぎ行くことも知らず、何もしないのに人の悪口を言ってスッキリしたりしてそれをしあわせだと思っていたことでしょう」「でも大家さんと出会えて人生がわかりました。僕はしあわせの本当の意味を知りました」と、涙をはばかることなく大家さんへの感謝の思いを述べていた。ふたりの交流がどれほど深く濃いものだったかを偲ばせるシーンだった。
矢部と「大家さん」の物語は幕を閉じてしまったが、近年、ふたりのような絆を生み出す試みが広がっている。高齢者と若者がひとつ屋根の下で生活をともにする「異世代シェアハウス(ホームシェア)」という取り組みだ。
1 2