そのように原作をうまく脚本化する秘訣は、作品の核を残したまま再構築できるように、敢えて原作を繰り返し読んだりせず、大事なところを的確に抜き出す作業に集中することだという。2017年4月2日付ニュースサイト「文春オンライン」のインタビューで野木亜紀子は<原作を脚色する時って、一度原作を忘れた方がいいと思うんですよ><結局、重要なのはパーツではなく、作品の哲学を曲げないようにすること>と語っている。ただ同時に、<ファンじゃないと原作ものってやっちゃいけないと思うんです>とも話しており、原作へのリスペクトが根底にあるからこそ、そのような作業が可能なのだろう。
ただ、野木亜紀子は原作モノだけでなく、オリジナル脚本も評価が高い。今年1月期に放送された石原さとみ主演の大ヒットドラマ『アンナチュラル』は野木亜紀子のオリジナル脚本作品。全話平均視聴率11.1%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を獲得し、「第11回 コンフィデンスアワード・ドラマ賞」では作品賞、脚本賞、主演女優賞、助演男優賞(井浦新/43)の4部門を受賞した。
原作がない作品をゼロからつくるのは大変なように思える。しかし、2018年5月1日付ニュースサイト「ORICON NEWS」のインタビューで彼女は、<よく『オリジナルって大変じゃない?』と言われますが、原作ものの脚本よりも、正直言ってラクです><原作ものの場合、映像媒体としてはこっちのほうが面白いというアイデアが浮かんでも、原作読者が納得しないかもという悩みが多々生じるのですが、オリジナルは自分たちの考えだけで突き進めて、自由に描けますからね>とコメントしていた。
そういう意味では、『獣になれない私たち』は、野木亜紀子のやりたいことがふんだんに盛り込める作品といえるだろう。本作では“現代に生きる人々のリアル”にこだわったというが、どのような仕上がりになるのだろうか
(ボンゾ)
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