
Thinkstock/Photo by KatarzynaBialasiewicz
日本介護クラフトユニオンは今年、「介護従事者がハラスメントを受けた経験」を発表した。それによれば、回答者の4人中3人に当たる74.2%が「利用者や利用者の家族などからハラスメントされたことがある」と回答した。また、2016年度の介護施設などで働く介護職員による高齢者への虐待は452件あり、前年度より44件(10.8%)増えたと厚生労働省は報告した。利用者からのハラスメントだけでなく、職員による利用者への虐待も増加しているとなると、需要の急増に合わせて介護現場がいかに混沌としているかがわかる。
8月20日に放送された『深層NEWS』(BS日テレ系)では、介護労働を研究する城西国際大学准教授・篠崎良勝氏と介護・福祉関係のトラブルを中心に扱う弁護士・外岡潤氏が出演し、介護現場の現状や解決策などについて語った。
在宅だと利用者の要求は過度になる?
篠崎氏はハラスメントが増加している背景について、「以前から問題視はされていました。なので、私の中では“古くて新しい問題”なのかなって思っています」と、ハラスメントはこれまでも常態化していたが、最近になってようやく声を上げられるようになったと話す。秘められていた問題が表面化しただけという見方だ。
「介護職っていうのは相手の生活空間の場で仕事をしてますよね、特に在宅で働くホームヘルパーさんは。そうすると相手が日常のままでいられるような環境を作ろうとするわけです。そうすると、利用者さんや家族の方が度を超えた要求をしてくることがある」
利用者の中には、ハラスメントをしている自覚さえない人もいるという。
また、これまで職員が声を上げられなかった原因については、こう指摘する。
「暴力の場合であれば、利用者さんのほうに『何かストレスがあったのではないか?』ということで、その方の生活背景を探ろうということでいって、暴力というものにあまり焦点がいかなかった」
ハラスメントが起きても、利用者の心境を汲み取ることが当たり前とされ、ハラスメント自体を問題視しない傾向があったらしい。職員がこれまで、どれだけの我慢を強いられてきたかが伺える。
事業所は利用者に対して立場が弱い
他方、外岡氏は「ひどいハラスメントであっても、職員は毅然とした態度をとることが難しい」と話す。
「1つの事業所が耐えかねて、利用者側に『もう行きません』とか最後通知を突きつけてしまうと、噂が広まってしまう。『あそこは介護でやってるのにけしからん』みたいな……場合によっては『行政に通報するぞ』とか」
「事業所としては立場が弱いので、どうしても上は相談を受けても『これはちょっと様子を見よう』とか『昔はこれくらい我慢したものだ』みたいなことを押し付けてしまう」
特にSNS全盛の今、悪い噂は即座に広まりかねないだろう。
ただ、事業所側から利用者との契約を打ち切ることも可能だ。しかし、「(契約を打ち切れるケースは)『利用者との信頼関係が破壊された時』っていう表現になってるんですね。しかし、それは非常に曖昧な書き方なので、実際に『あなたはハラスメントが酷いので解除します』って言えるかって言うと、とてもできない」
介護事業は高齢化の進む日本社会において成長が予想される業界だが、介護保険適用のサービスを提供するためには、介護事業者として自治体から許可を受けなければならない。もし利用者からのクレームにより行政による立ち入り捜査などに発展すれば、ビジネスとしては大打撃だ。そのため、どうしても事業所は受け身になりやすいようだ。ただ、その対応が職員を追い込み、利用者への虐待という“仕返し”を生んでしまっている現状があるという。
1 2