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星野源が『逃げ恥』ブームに抱いていた葛藤、「アイデア」の暗い歌詞に反映

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 そして、厄介だったのは、世間で言われている自分のパブリックイメージを完全に「自分ではない」と言い切ることもできなかったからだ。それはそうだ。24時間365日いつも笑顔でいる人間がいないように、24時間365日いつも沈鬱な表情を浮かべている人もいない。人はそれぞれ色々な顔をもって日々を暮らしている。

 だから、星野源も「こんなのは自分じゃない!」と言いたくはないし、言い出せなかった。そしてそれは自分自身のためでもあり、自分の仕事から元気をもらっているファンのためでもある。

<『本当の自分じゃない』って言っちゃうのは、乗り越えられなかった自分を守るための嘘でしかないから。人前に出てお金もらってる時点で本当の自分は違うとか言ってんじゃねえぞって思う。どんだけの人がその人の活動を支えに生きてるかを考えるとね。カッコ悪くてそんな嘘つけないです>

 星野源と同じような境遇に置かれた先人のなかには、その重責に耐えきれず、活動をマニアックな方向に振り切って大衆的なファンを切る方向に動く人はいた。実際、星野源自身も、<たまに楽曲提供だけして、もう歌わないで、2年に1回くらい役者仕事して、ラクチンだなみたいな、そんな生活憧れるなって思うんだけど>とも語っているが、その道を選ぶことはなかった。彼にしてみればそれは<カッコ悪い>からだ。

 星野源はそんな気持ちを<いつかそれごとポップスにしたいなっていう気持ちのほうが大きくて>と語っていた。「アイデア」の2番はまさにそんな複雑な気持ちがポップミュージックに昇華されたものだといえる。

 「アイデア」はサウンドの面でも、歌詞の面でも、『YELLOW DANCER』で確立された路線から一つコマを進めた作品である。それには、名声につきまとう宿痾を払いのけた結果としての「成長」も大きく関係しているだろう。そろそろ次のアルバム製作の話が出ていてもおかしくない頃合いだと思うが、次なる作品が楽しみだ。

(倉野尾 実)

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