
欧州車だけでなく、国産車にも排気量の小さい車が増えてきた。
車の排気量といえば、以前は基本的には性能やグレードに直結していた。しかし最近、昔に比べて、「車の排気量」が全体的に小さくなっているようには感じないだろうか。コンパクトカーでも高い走行性能を持つものがあるし、かつては2L前後が一般的であったファミリー向けの乗用車にも1.5~1.6L程度のものも存在する。そもそもエンジンを持たない電気自動車が市民権を得ているこの時代に、「排気量」ってどのような意味を持っているのだろうか……?
車のクラスを表す基準として、確かにかつては排気量を用いることが一般的であった。この「車の排気量」とは、エンジンのシリンダーの内径と気筒数、ピストンの上下運動の長さを掛け合わせたもの。例えば、「1.5L未満ならコンパクトカー」というように、エンジンのパワーを示す数値として認識されていた。
パワーが大きれば、加速性能や最高速度が高くなる。エンジンの回転数も抑えることができるため、同じ速度で走っていても、排気量の大きい車のほうが低い回転数で走行でき、その結果振動が少なくエンジン音も小さくなる。そのため、高級車ほど排気量が大きいのが一般的だった。
排気量と車両クラスがほぼ比例していたことから、排気量別に税額が定められているのが「自動車税」。乗用車の場合、「軽自動車税」(年1万800円)が徴収される軽自動車を除き、1L以下は年2万9500円。以降、0.5Lごとに段階的に税額が上がり、もっとも高い6L超の車は11万1000円となっている。
例外として、ロータリーエンジン搭載車は排気量の1.5倍の排気量区分で換算される。排気量が小さくても高出力を生み出すことができるためで、実際にマツダ・RX-7(FD3S型)の最高出力は、同時期のレシプロエンジン(ピストンエンジン)のスポーツカーと同等のレベルだった。

新型スズキ・ジムニーなどの軽自動車は自動車税が安い。

排気量6.5Lのランボルギーニ・アヴェンタドールSの自動車税は、年11万1000円。

マツダ・RX-7の排気量は1.3Lながら、2.6Lの日産・スカイラインGT-Rなどとライバル関係にあった。
しかし、現在では排気量で車両クラスを分けたり税額を決定したりするのは、いささかナンセンスといわざるを得ない。その理由は「エコカー」の存在だ。
1997年のトヨタ・プリウスの発売以来、爆発的に普及したハイブリッドカーは、化石燃料で動くエンジンと、電気で動くモーターの、2つの動力源を持つ。そして基本的には、排気量が小さめのエンジンを搭載し、燃費悪化の原因となりやすい加速時の動力アシストとしてモーターを稼働する。そのため、高速走行時にモーターが使用されることは極めて少ない。

ハイブリッドカーの「元祖」的存在のトヨタ・プリウス(初代)。
つまり、高排気量車のメリットである「最高速度の高さ」という点を、ハイブリッドカーのモーターが代替する領域はほとんどないといっていい。しかし、加速性能や振動の少なさ、エンジン音の小ささなど、高排気量車の持つそのほかのメリットについては、そのほとんどをモーターがカバーしているといってさしつかえないわけだ。
1 2