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株式会社Bespoは8月28日、飲食店のジャンルや希望予算、来店したい日時などを無料通信アプリ「LINE」を使用して伝えると、要望に適した店を表示してくれ、その場で予約できるサービス「ビスポ!」の利用開始を発表した。会食や飲み会、デートなどどんなシチュエーションでも、店選びは思いの外、時間を要してしまう。それでいて、目移りしてしまい結局決められなかった……という経験は誰にでもあるだろう。ザックリとニーズを伝えるだけで、店を何件もピックアップしてくれ、簡単に予約ができるサービスは客側にとってありがたい。
ただ、私がこのサービスを画期的だと感じた点は利便性だけではない。「ビスポ!」では、実際に客が予約した店に来店したかどうかや来店した時の様子などを店側が評価し、それらの情報を参加店全体で共有することができることだ。「食べログ」に代表される飲食店紹介サービスでは、客が一方的に店を評価するだけだが、このサービスでは店も客を評価する“相互評価”できるシステムになっている。
ドタキャンや食品ロスを減らすことが可能
相互評価が可能になれば、店側はドタキャンを繰り返す“ブラック客”を避け、機会損失や食品ロスを減らせるメリットがある。
三井住友トラストクラブ株式会社は、飲食業界での直前キャンセルや予約日時に客が来ない「無断キャンセル」が全体予約の 1~3%に達し、その年間推定損失額は750~2000億円にも上ると算出した。
また、農林水産省の「食品ロスの削減に向けて」によると、平成27年度の外食産業での食品ロスは133万トンと発表。このうちどれくらいの食品が、ドタキャンにより廃棄せざるを得なくなったかはわからないが、ブラック客の予約を受け付けなければ、もう少し食品ロスは減らせただろう。
7割以上のサービス業者が悪質クレームの被害に
さらに相互評価は、従業員のメンタルヘルスを守る切り札になるかもしれない。外食やサービス業などの労働組合で構成される産別労組「UAゼンセン」は昨年、百貨店やスーパーなどの従業員を対象に「客の悪質クレーム」に関するアンケート結果を発表。「業務中に来店客から暴言や暴力などの悪質なクレームを受けたことがあるか」を聞くと、「ある」と73.9%もの人が回答した。
同調査は流通やサービス業などを対象に行われたため、これを受けて「飲食業界でも7割近い人が客からの暴言や暴力に遭っているはずだ」と展開することに無理はあるが、多少なりとも似たような状況下にあると推測することは可能だろう。
そして、UAゼンセンは「悪質クレームが精神疾患や退職にもつながっている懸念もあります」としており、ブラック客が従業員を退職に追い込んでいる現状を指摘している。リサーチサービス「飲食店リサーチ」が飲食店経営者や運営者に聞いた調査によると、飲食店の79.8%が人手不足を感じているようだ。この悪循環を断ち切るためにも、横暴な客を店舗側がシャットアウトする権利は重要だろう。
「お客様は神様だ」という言葉を勘違いした非常識な一部の客のおかげで、迷惑を被っている店や従業員は少なくないだろう。店と客は平等である。相互評価システムがサービス業の働きやすさに寄与することに期待したい。