社会

東京オリンピック・パラリンピックは自主的なボランティアを11万人集められるか

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元日本代表監督、現FC今治オーナー・岡田武史氏が手掛ける地域クラブのボランティアの現状

FC今治のボランティア

FC今治ボランティアスタッフの活動の様子

 オリンピックのボランティアが、正当な報酬を払うことなく都合の良い労働力を集めようとする“ブラックボランティア”だと指摘する声は日に日に増しているが。しかし、すべてのボランティアがそうした性質のものだというわけではもちろんない。筆者が関わらせてもらっている、スポーツクラブのボランティアにも少し触れておきたい。

 元日本代表監督の岡田武史氏は、いまサッカークラブ、FC今治のオーナーを務めている。FC今治はJリーグの下位カテゴリーであるJFLに所属している。Jリーグクラブのように豊富な資金と集客ができれば、社員を雇ったり企業に委託し有償スタッフとして活動してもらったりすることも可能だろう。だが街クラブでは試合ごとにスタッフを増やし、企業に運営を委託することはコスト面でも難しいのが現実だ。

 そこで重要となってくるのが、試合当日の運営を手助けしてくれるボランティアスタッフだ。チケット確認はもちろんのこと、席案内、誘導から駐車場対応にゴミ回収など、試合当日の開門から閉門まで多くのボランティアスタッフに支えられている。

 現在、FC今治ではボランティアスタッフとして約42名が登録し、1試合20名ほどで回しているという。ボランティアスタッフのひとりに、活動に対して苦に感じることはあるのか伺った。

 「基本的に好きに楽しんでいるだけなので、いろいろと言われることもありますが、気にしません。やりたいからやってるだけ」

 地元にあるサッカークラブにボランティアという形で貢献できること、そして何よりもボランティアを好きでやっている自主性がそこにはあった。

ボランティアへの参加を阻むボランティア当事者と部外者の温度差

 東京2020大会のボランティア募集要項に対する批判は、決して的外れではないだろう。ボランティア時間、日数を考えれば躊躇する人もいるかもしれない。けれど、ボランティアは強制ではない。

 参加する人自身は決して“やらされている”わけではなく、自分に協力できることがあれば参加したいという、当事者の自主性から行動しているだけなのだ。誰かに言われて動いているのではなく、当事者が自己責任で行動している。

 ボランティア活動をする当事者から、文句の言葉は出てこない。もしかしたら心の中にはあるのかもしれない。だが、そこにはボランティアの本質を理解し、当事者にとって当たり前の行動を取っているだけであり、やりたいから希望しているのだ。

スーパーボランティア・尾畠春夫さんのボランティアに対する姿勢

 山口県の山中から2歳児を救出した、スーパーボランティア・尾畠春夫さんのニュースは記憶に新しいところだ。尾畠さんは、過去には東日本大震災、新潟県中越沖地震、西日本豪雨などでも積極的にボランティア活動をしている。

 そんな尾畠さんは、多くのインタビューで、自身のボランティア活動の信念について語っている。

「ボランティアは人を頼ったり、物をもらったりしちゃいけない」
「自己完結、自己責任。怪我しても自己責任」
「なぜ大分県からわざわざ? わざわざじゃないですよ。日本人だから」

 尾畠さんにとってボランティアとは、自分で決めて行動していることであり、やらされているものでない。そこにあるのは純粋に参加したい、協力したいという、自ら責任を持って人の役に立ちたいという思いだけだ。参加を希望する多くの人にとっては“やりがい搾取”などという感情はない。

 ただ、東京2020大会のボランティアがこの条件のままで11万人も集まるかというと、わからない。長期間にわたり東京都内で無賃労働をすることが可能で、かつ自主的にそれをしたい、オリンピックとパラリンピックへの熱意を持つ人々がどれだけ集まるかだ。正式な募集は9月中旬から始まる。

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