『さよならミニスカート』の神山仁那は、傷ついている。まず握手会で切りつけられたことに。それからというもの、無思慮なクラスメイト、無神経な視線、ただ生きているだけで毎日傷つき続けている。なぜ彼女が傷つき続けなければいけないのか。それは彼女個人に問題があるわけではなく、社会の側におかしな要素があるのだと、読者は気づいていくだろう。ヒロインが前向きに頑張れば精神論や友人・恋人の支えで乗り越えていけるような、わかりやすい問題設定はされていない。
また、理想の女の子である長栖未玖は、たとえば「実は裏の顔があり、イジメの首謀者」といったいかにもマンガチックなデフォルメはなさそうだ(今後の展開でそうなったら興醒めだ)。しかし彼女がどこまで本音を発言しているのかはわからない。2015年1~3月に放送された連続ドラマ『問題のあるレストラン』(フジテレビ系)は、セクハラ・パワハラ・性差別に立ち向かう女性たちとゲイでレストランを立ち上げる物語だったが、そこにも長栖未玖のようなキャラクターがいた。「きらきら巻き髪量産型女子」・川奈藍里(演:高畑充希)である。男ウケの良い振る舞いを心得る川奈は、セクハラも上手に受け流すが、本音では理不尽にイラついている部分もあり、ストーカー被害によってそれまでの不満が爆発した。
『問題のあるレストラン』は「男vs女」の構図だったが、『さよならミニスカート』はおそらく、そうはならない。編集長の声明には<『さよならミニスカート』は、少女たちだけでなく、いつかの少女たち、今は大人の女性になった、かつての「りぼん」読者たちをも大切にすることができるまんがだからです>ともある。女性が、女児が、ミソジニーありきの常識から解放されれば、男性も、そして社会も変わっていけるだろうか。かつての「りぼん」読者だった女性のひとりとして、『さよならミニスカート』の続きが楽しみである。
『さよならミニスカート』はwebでも「りぼん」本誌と同じ内容を読むことができる(1話分を分割して毎週無料公開、無料公開期間は各回で異なる)。