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中高年のビジネスパーソンが副業をすることのメリット

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Thinkstock/Photo by DragonImages

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働き方改革の一環で増えつつある副業

 政府が労働者の副業を後押しする時代になった。厚生労働省が今年1月に従来の方針を変更し、「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を作成し、モデル就業規則の「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という規定を削除し、「原則的に副業を認めるべきだ」としたのである。

 政府の方針変更もあり、働き方改革の一環であるとの見地からも、副業を認める会社が増えつつあるようだ。

 若手でバリバリ働いているビジネスパーソンにとって、本来これはチャンスのはずである。異業種の事情が理解できると、さまざまな角度から物事が見えるようになり、自分の本業に関する新しいアイデアが浮かんだりするからだ。

 しかし、実際には若手ビジネスパーソンが副業をするのは容易ではないだろう。本業が忙しくて副業まで手が回らない、という事情もあるだろうし、副業が勤務先に知られると「転職先を探しているのかもしれない」と疑われたり「本業をおろそかにするな」と叱られたりしかねないからである。

中高年の副業のメリットは、本人にとっても企業にとっても大きい

 一方、中高年のビジネスパーソンにとっては、副業は大変有り難い存在である。部長や役員を目指している人は別として、そろそろ社内での先が見え、活躍の場が限られるようになってくる頃だからだ。出世コースに乗らなかった場合、時間的な余裕も出て来るし、人生90年時代、100年時代に向けてセカンドキャリアも気になり始める。

 いまの企業では活躍の場がなくても、積んできた経験が活かせる職場は多いはずだ。営業でも経理でも総務でも、中小企業の多くはノウハウ不足に悩んでいるはずだからである。したがって、長年従事してきた仕事の経験やノウハウが活かせて活躍できる場が、きっと見つかるはずだ。特に優れた人材でなくても、労働力不足の世の中だから、大事に扱ってくれる所もあるだろう。

 副業が在宅ビジネスではない場合、その副業先の職場にうまく溶け込めるようであれば、退職後のセカンドキャリアとして検討しよう。現在の勤務先に定年後再雇用されて、安い給料で昔の部下に仕えるようなら、セカンドキャリアで輝いたほうがずっと良いだろう。

 副業であれば、職場に溶け込めなかったら辞めて、別の副業先を探せば良いので、気が楽である。うまく溶け込める職場が見つかるまで、トライしてみれば良いだろう。

セカンドキャリアのリハーサルにもなる副業

 ただ、いまの職場で活躍の場がないから別の職場で副業する、という場合には、副業先のほうが企業規模が小さい場合が多い。企業規模が異なると企業文化も異なるであろうから、「私の会社では……」といった発言は控えたほうが良いだろう。「郷に入っては郷に従え」である。

 年功序列賃金制の日本企業では、定年前は比較的年収が多いので、定年まで待ってから転職するのが普通だろうが、「自分を必要とする職場で活躍したい」という思いが強ければ、定年を待たずに転職しても良いかもしれない。

 副業をしないで、定年後に見知らぬ会社に中途採用され、結局職場の雰囲気に溶け込めずに不幸なセカンドライフになる、というケースも多いようだ。そうしたリスクを恐れて、いまの職場での定年後再雇用を選択するとしたら、それは悲しいことだ。

 これまでは、副業が許されなかったので、そうした残念なケースも多かったのかもしれないが、転職が認められるのであれば、ぜひともトライしてみたいものだ。

 セカンドキャリアとして起業を選ぶ場合にも、副業は有り難い。たとえば夫婦で喫茶店を経営する場合、当然ながらノウハウが必要である。ノウハウを得るためには、これまた当然のこと、実際に喫茶店で働いてみるべきである。

 副業として働いてみれば、喫茶店経営というものが、客の立場から想像していたのと大きく異なるものだ、ということに気づくかもしれない。その結果、自分には無理だとわかれば、それは素晴らしいことだ。喫茶店を経営しはじめてから気がついても手遅れなのだから。

 働いてみて、やはりぜひ喫茶店を経営したいと考えた場合には、店のノウハウやマニュアルを徹底的に学ぼう。ノウハウやマニュアルというのは、その店や業界が過去から数多くの失敗をしてきた反省の上に書かれたものであるから、それをしっかり学べば、自分が失敗する可能性は大幅に減るだろう。

 結局、転職するにしても起業するにしても、現役時代に副業をしておくことが大いにリスクを軽減し、役に立つ、ということになる。

副業は企業にとっても「福利厚生」の一環となる

 以上、ビジネスパーソンの視点で論じてきたが、それを反対側から見れば、企業の視点でも、同様のことが言える。若手社員に副業を認めるのはリスクも大きいが、中高年社員に副業を認めることは、大きな意味を持つのである。

 1つは社員に対する「福利厚生」としてであるが、場合によっては、「活躍していない中高年は、高い給料は払えないから、副業で稼いでくれ」と言えるかもしれない。そうなれば、福利厚生というよりコスト削減策であろうが。

 さらに重要なのが、リストラ効果である。社内で活躍していない社員が定年後も再雇用されるとすると、人件費がかさむのみならず、「元の部下に元の上司が仕えることで、お互いに仕事がやりにくい」といった問題が生じかねない。そこで、社員には積極的に副業をしてもらって定年後の行き先を自分で探してもらえれば、企業にとっても大きなメリットとなるのである。

 起業してもらうのは、さらに良いかもしれない。喫茶店が繁盛して、2店目を出すときには、気心の知れた昔の同僚(つまり当社の定年退職者)を雇ってくれるかもしれないからである。

 場合によっては、50歳あたりで中高年社員が2つに分けられるかもしれない。「定年を延長しますので、ぜひ当社にてご活躍ください」という社員と、「定年後は、希望すれば再雇用するが、給料も安いし、昔の部下にお仕えすることになるよ。セカンドキャリアの準備したら?」という社員を線引きするのである。

 後者に対しては、積極的に副業を勧めても良いであろうし、定年を待たずに早期退職して転職や起業をした場合には、割増退職金を支払う、といったことも要検討であろう。

 社員にとっても企業にとってもメリットのある、Win-Winの関係である。

塚崎公義

久留米大学商学部教授。東京都生まれ。1981年、東京大学法学部卒業。日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。主に調査関連部署に勤務した後、2005年に銀行を退職して久留米大学へ。著書に『一番わかりやすい日本経済入門』『日本経済が黄金期に入ったこれだけの理由(9月24日発売予定)』(いずれも河出書房新社)など多数。

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