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8月21日、菅義偉官房長官が札幌市内での講演で、携帯電話料金について「4割程度下げる余地はある」と発言したことで、大手携帯3社の株価が同時に急落してしまうという波紋を呼んだ。
つまり、菅官房長官はNTTドコモ、au、ソフトバンクの携帯電話料金のことを「高すぎる」と指摘したことになる。これに対し、ネット上でも「高すぎる」ことに賛同するコメントが多く見られたようだ。
では、なぜ菅官房長官が民間企業の料金体系に言及したのか。「(携帯大手は)国民の財産である公共の電波を利用している。過度な利益を上げるべきではなく」と彼は続けている。この発言を受けて、すぐさま翌々日の23日には総務省が諮問機関である情報通信審議会に携帯電話の料金引き下げについて諮問している。
なぜ、政府が民間企業の儲けに口出しできるのか?
この騒動に対して、政府が民間企業の自由な価格設定に介入することはナンセンスである、利潤追求体である民間企業が自由競争の結果として設定した価格に口出しすべきではない、という意見も出ている。また、現状の価格でも消費者が利用している以上、利潤追求体である企業側からあえて価格を下げることなどあり得ないし、そもそもデフレ脱却を目指している政府が価格を押し下げる圧力を加えてどうするのか、という声も聞かれる。
しかし、菅官房長官が「国民の財産である公共の電波を利用している」と言及したとおり、国の免許を受けて国民の共有財産である電波を使用しているという点では、事業者のみの利潤追求だけに走ってはならないことを示している。実際、総務省の『モバイル市場の公正競争促進に関する検討会 第4回会合事務局説明資料 平成30年1月 総合通信基盤局』には以下の通り記載されている。
“具体的な接続料の算定方法は、電気通信事業法や省令によって規定されており、総務省は届出があった接続約款を検証し、接続料が適正と認められない場合等はその変更を命じることができる。”
つまり、携帯電話会社は、家電や自動車を製造している一般的な企業とは立場が異なり、国民が電波という資源を使わせてあげているのだから、もっと国民に便宜を図るべきだ、国民に利益を還元すべきだという理屈もあるのだ。
日本の携帯料金はどれだけ高いのか?
ところで、菅官房長官が言及したように、日本の携帯大手の料金は海外に比較して高いのだろうか。
ここで今度は総務省の『電気通信サービスに係る肉外価格差調査 一平成28年度調査結果〈概要〉ー 平成29年7月 総務省』を参照してみる。ここでは、データ容量ごとの通信料金が掲載されているので、以下に高い順に記載してみる。
●データ容量/月2GB
ニューヨーク:6187円
ソウル:3819円
東京:2680円
ロンドン:2505円
デュッセルドルフ:1968円
パリ:1915円
●データ容量/月5GB
ニューヨーク:6187円
ソウル:4640円
デュッセルドルフ:3937円
東京:3760円
パリ:2554円
ロンドン:2505円
●データ容量/月20GB
デュッセルドルフ:9845円
東京:8642円
ニューヨーク:7215円
ソウル:5460円
パリ:3192円
ロンドン:2947円
どのプランも常に東京が断トツで高いわけではなかった。ただ、このランキングの範囲で東京の料金を最下位と比較すると、2GBでは東京がパリの約1.4倍、5GBでは東京はロンドンの約1.5倍、そして最も目立つのが、20GBで東京はロンドンの約3倍になっている。
確かにこれらの比較を見れば、菅官房長官の「4割程度下げる余地はある」という発言はまったくのでたらめとも言えない。特に、20GBでのロンドンとの料金差は大きい。ただ、この調査結果だけでは、回線の品質やサービスの質については比較できない。もしかすると、このあたりの差を考慮すれば、単純に日本は高いとは言えなくなるかもしれないのだ。