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ニューヨーク州知事を目指すシンシア・ニクソン~もう『セックス&ザ・シティ』のミランダじゃない

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写真:Splash/アフロ

 8月29日、ニューヨーク郊外にあるホフストラ大学にて、民主党のニューヨーク州知事立候補者のディベートがおこなわれた。立候補者は2人。現役の知事で3選目を目指すアンドリュー・クオモと、ドラマ『セックス&ザ・シティ』のミランダ役で知られる俳優のシンシア・ニクソンが1対1で丁々発止の、まさに熱い討論を繰り広げた。

 州知事選の本選は11月6日だが、先立つ予備選が9月13日におこなわれる。クオモとニクソンのうち、予備選で勝った者が本選で共和党候補者と対峙することになる。

シンシア・ニクソンとは?

 本名はシンシア・エレン・ニクソン。1966年、ニューヨークのマンハッタン生まれ。母親は女優、父親はラジオ・ジャーナリスト。9歳で母親が出演していたテレビのクイズ番組に初出演。12歳で演技を始め、以後、テレビ、映画、ブロードウェイで活躍する。ニクソンの人気と知名度を決定付けたのは、HBO『セックス&ザ・シティ』(1998–2004)の弁護士、ミランダ役だ。同役により2004年のエミー賞最優秀助演女優賞を獲得し、同番組終了後も俳優業を続け、同時に公教育支援の活動家となる。2006年に乳がんをサバイバルしたのちは女性の健康問題、同性のパートナーを得てからはLGBTQについての活動も開始している。

 プライベートでは1988年から2003年にかけて大学の同窓だった英文学の教授である男性をパートナーに、二児をもうける。2004年に教育活動家のクリスティン・マリノーリと交際を始め、のちに婚約。2011年にマリノーリが男児を出産。同年、ニューヨーク州で同性婚が合法化され、翌2012年にマリノーリと結婚する。今年3月に州知事立候補を表明し、その3カ月後に長男がトランスジェンダーであると公表している。熱心なユダヤ教徒であり、マンハッタンにあるLGBTシナゴーグ(ユダヤ寺院)のメンバーでもある。

 ニクソンは今回の選挙では教育と老朽化したニューヨーク市の地下鉄修復問題を最重要課題として訴えているが、公式ウエブサイトでは医療皆保険、中絶、家賃統制、経済の公平性、地球温暖化、法の公正、マリファナ解禁、障害者の権利、移民の権利、州行政腐敗など、実に多数の問題を列挙している。

「嘘を付くのはやめてくれませんか?」

 ディベートにはやわらかな素材の白いスーツに淡いグリーンのシャツを着て登場したニクソン。対戦相手のクオモは、父親もかつてニューヨーク州の知事で、自身も知事をすでに2期務め、将来は大統領選への出馬も噂されているベテランだ。しかし、ニクソンに緊張感はなかった。公職への立候補こそ初めてだが、役者として人前に立つ仕事を子供の頃から続け、かつ社会活動家として長年の経験を持つことから、落ち着き払い、堂々とした態度をみせた。

 ディベートが始まると、激しい応酬となった。ニクソンはディベートで持ち出されるであろうすべての問題について予習をこなしており、答えに詰まるシーンはなかった。それどころか、クオモの発言中に何度も異議を唱えてクオモに「(私の発言を)遮るをはやめてくれませんか?」と制され、逆に「嘘を付くのはやめてくれませんか?」と鋭く言い返した。このセリフはその過激さから翌日のメディアで盛んに報じられた。

 同じ民主党とはいえ、クオモは世襲知事で元妻はケネディ一族。政界、経済界とのつながりが強く、トランプとの交流もある。今年3月にはクオモのアドバイザーのうち最高位にあった者が収賄で有罪判決を受けている。ニクソンはそこを「腐敗」と突いた。一方、徹底してリベラルなプログレッシブ派だが政治家ではなかったニクソンを、クオモは「経験不足」と攻撃した。

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堂本かおる

ニューヨーク在住のフリーランスライター。米国およびNYのブラックカルチャー、マイノリティ文化、移民、教育、犯罪など社会事情専門。

サイト:http://www.nybct.com/

ブログ:ハーレム・ジャーナル

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