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貯蓄を邪魔する究極のNGワード「頑張った自分へのご褒美」

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Thinkstock/Photo by Milatas

お金が貯まらない悪魔の言葉

 一般雑誌でお金に関する記事を見ていると、「お金が貯まる魔法の習慣」だとか「引き寄せの法則」みたいなフレーズが出てくることがあります。言ってみればお金とスピリチュアルを合わせたような内容で、占い好きの人や特に女性には常に人気のある定番的な記事です。

 長財布を使うべきだとか、お札は揃えて入れなさいとか、私に言わせればこうしたもののほとんどは荒唐無稽なオカルトとしか思えないのですが、相変わらずこの手の類の記事は人気があります。

 私は「お金が貯まる魔法の言葉」などは存在しないと思いますが、「お金が貯まらない悪魔の言葉」は確実に存在すると思っています。そうした悪魔の言葉の最たるものが、「頑張った自分へのご褒美」です。

 これは日常生活の中でしばしば使われています。具体的に言えば、何かを衝動買いしてしまったとか、あるいはダイエット中なのに美味しいスイーツをいっぱい食べてしまったというケースです。言わばコミットメントを自ら放棄してしまったときです。そんなときに「最近、仕事頑張っているのだからそんな自分に対するご褒美だ」という言葉をつい口にします。フェイスブックやツイッターなどのSNSを見ていると、こういうコメントや書き込みは頻繁に出てきます。そんなよく使われる言葉がなぜ「悪魔の言葉」なのでしょうか。

人間は行動を起こすときに理由づけを求める

 本来、モノを買ったり、美味しいものを食べたりするのは人間の自然な欲求です。場合によっては衝動買いをしたり、ダイエット中にもかかわらず突然たまらなく甘いものが食べたくなってケーキを2個も食べてしまったりする。こういうことは人間だれしもあることです。

 そもそも人間は心理的に遠い将来得られるであろう価値を低く見積もりがちです。1年先のスリムな姿という価値よりも、目の前にあるショートケーキに対する魅力のほうがはるかに価値が大きいからです。ですからたまには衝動買いや衝動食いをするのはしょうがないのです。

 さらに人間というのは何か行動を起こすときに因果関係や理由づけを求めるものです。「~だからこうなった」という因果関係がないと、どこか気持ち悪さを感じます。それに自分の行動や判断が加わってくると「理由づけ」を求めたがります。「こうなったのは、これこれこういうことがあったからだ」と納得したがる性質を持っているのです。

 ところが何も理由がないのに、あるいは何も因果関係がないにもかかわらず、そういう行動(衝動買いや衝動食いい)をしてしまうと後ろめたい気持ちになってしまいます。その後ろめたさを解消するために「これは頑張った自分へのご褒美だから」という勝手な理由づけを行うのです。つまり、ダメな自分に対する言い訳と言っていいでしょう。「でも別にそれぐらいいいじゃない」と思うかもしれませんが、やはり「自分へのご褒美」を頻繁に使うのはあまり好ましくないと言えます。

 その理由は、「自分へのご褒美」がオールマイティのカードだからです。これを切り続けると際限なく無駄遣いが続くことになってしまうからです。欲しいものがあれば買えばいいし、食べたいものがあれば食べればいいのです。別にその行為に対して無理に理由づけをしたり、正当化したりする必要は何もありません。ただ、それが無駄遣いだと思うのなら素直に反省して「次は気をつけよう」と考えればいいだけです。ところが、「自分へのご褒美」ということにして、正当化してしまうと、ただ自分の心を納得させただけで、そこに反省も対策も出てこないからです。

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大江英樹

経済コラムニスト。オフィス・リベルタス代表。1952年、大阪府生まれ。大手証券会社で個人資産運用業務、企業年金制度のコンサルティングなどに従事。年間100回以上の講演やテレビ出演。執筆活動を通し、経済や資産運用などの知識を分かりやすく伝えている。主な著書に主な著書に『経済まるわかり』(日経HR社)、『知らないと損する 経済とおかねの超基本1年生』(東洋経済新報社)などがある。

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