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北海道胆振東部地震に被災したファイナンシャルプランナーの「地震とお金」の本音

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生き延びるためのマネー/川部紀子

 ファイナンシャルプランナーで社会保険労務士の川部紀子です。2018年9月6日、最大震度7が観測された北海道胆振東部地震が発生しました。札幌市在住の筆者も被災しましたが、幸いケガや被害はありませんでした。筆者はあまり被災したという意識はないのですが、経験したことのない大きな揺れと、停電、それに伴うマンションの断水、その後の独特の空気感を体験しました。

 地震とお金について、専門家としての知識だけでなく、実際に大きな影響を受けたことで感じたこともたくさんありました。「今までの自分の知識は机上の空論だったのかな」「近い過去にも日本では大きな地震があったけど、対岸の火事という意識だったのかな」と反省をする点もありました。そこで今回は、北海道胆振東部地震の実体験と絡めて、「地震とお金」についてお伝えしたいと思います。

キャッシュレス推しの筆者も感じた現金のありがたみ

 午前3時過ぎに大きな揺れが起き、その直後に停電が発生しました。マンションのエレベーターは停止中で、階段で降りてコンビニに向かったところ、真っ暗の中ではあるものの営業していました。連載の中で何度か書いてきたように、私はコンビニでは絶対にクレジットカードか電子マネーで買うべきだと考えています。しかし停電中のため会計は現金のみ。幸い、必ず現金も持ち合わせるようにしていたので買うことができましたが、ほぼ現金を持たない徹底したキャッシュレス生活の人だったら何も買えず困り果てていたことでしょう。

 コンビニATMも使えないので、現金を持ち合わせていなかった人たちが銀行へ押し寄せていました。大半の銀行ATMが動いておらず、復旧を待つ人の数はアイドルの出待ちのように大量でした。自家発電で動いているATMもあったのかもしれませんが、いずれにせよATMの数も、紙幣の数も限界があります。とにかく、非常に現金が手に入りにくい状況であったのは間違いありません。

 現金しか使えないのに現金が手に入らないという状況を目の当たりにして、ある程度の現金の持ち合わせは必要だと感じました。昨年出した『家計簿不要!お金がめぐる財布の使い方』(永岡書店)の中でポチ袋に緊急資金の1万円を入れてしっかり封をすることを推奨していますが、リアルに「緊急資金」の必要性を感じる経験でした。

もしもテレビが壊れたなら

 地震保険についても考えました。幸いにして私の住まいは被害を受けなかったものの、我が家で一番危なかったのはテレビです。テレビの厚みギリギリの台に置いているので、テレビが前にずれて半分近くが台からはみ出していました。もしテレビが落ちて壊れていたとしても、その他のものは全く被害がなかったと思われます。その場合、地震保険から全く保険金が支払われない可能性が高いです。

 というのも、地震保険は損害の程度によって保険金の支払いが変わるのです。「全損」「半損」「一部損」に該当すると支払われるのですが……テレビが壊れた程度では、支払われない可能性が非常に高いです。最低でも一部損では? と感じるかもしれませんが、ここでいう「全部」や「一部」は、テレビの「全部」や「一部」ではありません。家の中の保険対象となる物(家財)全体なのか一部なのかという見方をします。テレビはたくさんの物の中のほんの一部でしかありません。このテレビの時価が家財全体の10%以上となる損害に該当してはじめて「一部損」の可能性が出てきます。つまり、「○○だけが壊れた」という場合、全体の10%には達しにくいというわけです。

 また地震保険というのは火災保険に付けるオプションのようなものなので、まずは火災保険ありきだということを忘れないでください。

被災地のためにできること

 北海道外の親戚知人から「何か必要なものはない? 送るよ!」と声をかけられた人も多いようです。でも、私を含め、被害がなければ、特に何も必要ない場合が多いです。どうしてもお返しを考えてしまいますし、個人宛の荷物が増えれば増えるほど物流が乱れ、支援を遅らせてしまう可能性が出てきます。

 あたたかい気持ちは誰もが喜ぶと思いますが、まずは本当に「物」に困っているのかどうかを考えてみてもらえると嬉しいです。どうしても個人宛に何かしたいのであれば、「心ばかりのお見舞いをさせてほしいので」と振込先を聞くと一番いいかもしれません。断られる可能性が高いですが、そのくらいの気持ちがあるのだということは伝わります。

 また被災地に送るものも、何が必要で足りないかを想像したり知ることは非常に難しいのです。実際、ある避難所にいる知り合いは「マウスウォッシュとウェットティッシュ買って来て!」と言っていたそうですが、別の避難所では、食べ物は余っているけど離乳食がなくて慌てていたようです。何不自由ない普通の生活をしているとなかなか思い付かないものですし、避難所によって、刻一刻と必要なものは変わってくるのです。

 そして、気持ちはとても嬉しいしありがたいけれど、物資や千羽鶴よりも「お金」との声も出ているそうです。被災者自身は口にして言いづらいことですが、重要な本音だと思います。震災直後は情報も錯綜していますし、自治体が被災者や避難所のニーズを把握しきれていないこともあります。まずは落ち着いて、いまできること、あとですべきこと、本当に被災地のためになるのはなにかを考えるのが大切だと思います。

 寄付の方法の1つにふるさと納税があります。被害の大きかった厚真町、安平町、むかわ町にふるさと納税をすることで、町に寄付ができます。こんなときですから「返礼品不要」でもいいのではないでしょうか。各種ふるさと納税ポータルサイトや楽天市場などでも手続は可能ですが、下記オフィシャルサイトを見ていただくと町の皆さんに喜ばれると思います。

・「厚真町」http://www.town.atsuma.lg.jp/office/about/furusato_tax/
・「安平町」https://www.town.abira.lg.jp/chiikishinko/furusato-nozei
・「むかわ町」http://www.town.mukawa.lg.jp/2375.htm

 また、「Yahoo!ネット募金」が「平成30年北海道胆振東部地震 緊急災害支援募金(Yahoo!基金)」を立ち上げています。クレジットカード、Tポイントでも寄付ができます。

 偶然にも今回の記事に出会った方には、被災地を思うことと同時に、ぜひ自分自身が大地震に遭った時のことも想像していただきたいと思います。そして、備えを考えるきっかけになれば幸いです。

川部紀子

ファイナンシャルプランナー(CFP® 1級FP技能士)。社会保険労務士。1973年北海道生まれ。大手生命保険会社に8年間勤務し、営業の現場で約1000人の相談・ライフプランニングに携わる。その間、父ががんに罹り障害者の母を残し他界。自身もがんの疑いで入院する。母の介護認定を機に27歳にしてバリアフリーマンションを購入。生死とお金に翻弄される20代を過ごし、生きるためのお金と知識の必要性を痛感する。保険以外の知識も広めるべく30歳でFP事務所起業。後に社労士資格も取得し、現在「FP・社労士事務所川部商店」代表。お金に関するキャリアは20年超。個人レクチャー、講演の受講者は3万人を超えた。テレビ、ラジオ等のメディア出演も多数。新刊『まだ間に合う 老後資金4000万円をつくる!お金の貯め方・増やし方』(明日香出版社)が発売中。

twitter:@kawabenoriko

サイト:FP・社労士事務所 川部商店 川部紀子】

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