社会

どうして日本では夫婦別姓にできないの? 「自分の名前」を失う女性たちの生きづらさ

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ーーでも実質、伝統ではない?

打越士族は別として、庶民が姓を名乗るようになったのは明治に入ってからなので歴史はそんなに長くないですよ。明治時代に、日本ではじめての民法ができたとき、家の氏を決めることになったんです。。夫の姓にしなければならないとは決められていないのですが、長らく結婚とは女性が男性の家に「嫁入り」するのが一般的だったので、結果としてほとんどの女性が夫の姓になりました。そんな民法ができたのは、、女には選挙権もなく、無能力として契約などの法律行為ができない時代で、男女は対等とはほど遠い状態でした。男は不貞してもオッケーだけど女が不貞すると刑事罰にまでなる、という決まりもあったんですよ。

ーーその名残、いまもありませんか? 女性が不倫するとすごい叩かれますよね。同じ時期に不倫した男性俳優さんは大河ドラマ出て、女優さんは降板になりました。男性は芸の肥やしとプラスに受け止められることもあるくらいです。法律ってこんなふうに社会に影響を与えるんじゃないかなと感じます。

打越そこで、選択的夫婦別姓なんですよ。どちらも自分の姓のままでいられるというのは、女性と男性は対等だというひとつのメッセージになります。男女平等自体が嫌な人たちはそれってすごく受け入れがたいことだけど、いまどき「男女不平等でいい」なんておおっぴらにはいえないから、「子どもの姓が親と違うとかわいそう」などという理屈を持ち出してきてるのかもしれません。

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親と名前が違う子はかわいそう?

Thinstock/Photo by monkeybusinessimages/Photodisc

ーー子どもがかわいそうといいますが、「お母さんとお父さんの姓が違うのは嫌ですか?」って子どもに聞いたアンケートなんて見たことないですよね。

打越ないです。じゃあ、夫婦別姓が当たり前の各国の子どもたちはかわいそうなのでしょうか?そんな話は聞かないですよね。

ーー男性側が妻の姓になるのと、女性側が夫の姓になるのとでは、リスクや大変なことはお互いに同じなのでしょうか?

打越女性が改姓するのが当たり前だと思っている人がほとんどだと、妻の姓に変えた男性はいろんな人から理由を聞かれるそうですね。「お嫁さんの尻に敷かれてるの?」とか。

夫婦同姓一択は男性にとっても「生きづらい」

ーーそれってやっぱり姓を変えないほうが夫婦間で優位に立っているといっているようなものですよね。

打越そうなんです。「そちらの奥さんって良家の人なの?」「家が大事だから名前を変えないんでしょ?」と聞かれることもあるようです。逆に、夫の姓にした女性に対して「旦那さんの家柄ってそんなにいいんですか?」と聞かないのに(笑)。男の人も妻に姓を変えさせて、この家のあるじというイメージになるので、「自分が稼がなきゃ!」「妻子を養わなきゃ」などプレッシャーを感じるんじゃないかと思うんです。それって男性にとっても生きづらさがあると思うから、そういう観点からも選択的夫婦別姓について考えてもらいたいですね。

ーー現状だと、夫婦別姓を求める=女性のわがままと取られがちなんですね。女性が何かを訴えるとそう受け取られてしまう風潮を感じます。

打越そうですね、夫婦別姓は女性だけの問題ではないのに。でも一概に「男性だから反対」「年齢が上がるほど反対」ともいえないところがあります。ある70代の、憲法学者の男性とお話したとき、が「女性が実質的に姓を選べない現状は、個人の尊厳という大原則からしておかしい」といってくださいました。世論調査的には選択的夫婦別姓に反対が多いのが「70代」「男性」です。その男性も最初からそう思っていたわけではなく、「私は自分の姓に特に愛着もないし、婚姻して改姓することで生じる痛みについてぜんぜん考えたことがありませんでした。でも選択的夫婦別姓を求めて立ち上がったみなさんのお話をうかがって、なるほどこれは個人の尊厳に直結する話なんだってわかりました」ともお話されました。男性だからわからない、この年代の人とは話が通じないってことはないですね。

ーー若い層のほうが、男女とも「別姓でもいいじゃん」と思っていそうです。

打越20〜30代は、夫婦別姓でいいんじゃないですかという意見が多いですね。これから結婚を経験する人も多い若い世代に、これからの自分自身に関わってくる問題として関心を持ってもらえたらうれしいです。

*   *   *

ありがとうございました。

夫婦別姓というものを考える機会をもらって本当によかったなと思っています。

夫の姓になることが当たり前だと思いすぎてて、ぜんぜん気がつかなかったです。

女性である自分でも最初はなかなかピンとこなかったので、いまの日本で、男性が姓が変わってしまう側の気持ちをなかなか理解ができないのもわからなくはないなと思う部分もありました。

しかし実際にこうやって「自分の姓が変わってしまうことがつらい」と訴えている人がいるのだから、「自分がその立場だったらどう感じるんだろう」と想像をめぐらせ、妻が夫の姓に変えるのが当たり前になっていることに疑問を持ってもらいたいと思います。

女性の姓になると「尻に敷かれてるんだろ」などいわれるのも、夫婦同姓で96%の女性が夫の姓に変えているという事実がこういう形で人の考えや気持ちに影響しているなと感じます。私自身もそう思っていたところがあります。

いま自分が勉強している女性蔑視の問題にも通じるものを感じました。夫婦がそれぞれ姓を選択できるという法律に変われば、社会の根底にある意識も変わっていくことになるんじゃないのかな。そんな思いで、私も選択的夫婦別姓になるように願っています。

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