ネットへの転売で、棚から姿を消したオリジナルグッズ
管理棟の3階と4階が図書館。入口となる3階では、アジアに生息する「ミズオオトカゲ」の骨格標本が、守護神のように番をしている。本棚にはまだ数パーセントしか書籍が入っておらず、空いたスペースには愛媛の地図や名産品などが陳列されていた。
蔵書は、動物関係の専門書から増やしているそうだが……現1年生の入学前にもっと揃えられたらよかったのになぁという気もする。勉学に支障がなければいいのだけど。
図書館があるのと同じ3階には、キャンパスショップが。デイリーヤマザキと丸善書店のコラボ店で、店員さん渾身の手描き看板が温かく迎えてくれた。お菓子や文房具のほかには、解剖用具のセットや数千円もする医学書などが陳列されていて、さすが獣医学部といった感じ。
でもやっぱり大学を訪れたからには、オリジナルグッズをお土産にしたい!
店員さんに商品の場所を尋ねると、あぁ~と残念そうに苦笑する。
「最初はクッキーなどのオリジナル商品を置いていたんですけどね。空き箱がネットで倍の値段で転売されちゃったりしたので、売り場から引っ込めたんですよ」
思わぬところにも、報道の影響があるものだ。ここで働く人や学生さんの日常が早く穏やかになるためにも、政治的な問題は早く解消されてほしい。
とまあこんな感じで3〜4時間歩き回り、このキャンパスツアーを終えた。
たった1日で大学のすべてがわかるなんて思っちゃいない。でも、病院ツアーを案内してくれた先生は「血流のモニター映像」など専門的な話になると途端に目を輝かせるし、海水魚と淡水魚が同居している不思議な水槽を前にして「好適環境水」という先進的な水の話を楽しそうにしてくれたおじさまは、実は岡山理科大の事務局長さんだったりと、とにかく皆さん生き物が大好きだということは伝わってきた。図書館の司書さんも、そして何より入学を検討している高校生たちも、そうだった。

好適環境水の水槽で仲良く泳ぐ、金魚とイシモチ。
地元の人間としてのひいき目もあるのかもしれない。開校したばかりの不便さもあるとは思うが、でも、「好き」のエネルギーであふれたこの獣医学部には、まずはすくすく育ってほしいと願ってしまう。その上で、我々が投じた税金を、地域貢献というかたちで再び我々のもとに返してくれれば。
「政治的な問題で注目を集めてしまったこともあり、多くの獣医は同校を冷めた目で見つめています。また、集まる学生の質も決して高くはないという声もある。6年後、この学部の最初の学生たちの獣医師免許資格の合格率が出れば、教育の質もはっきりするのではないでしょうか」
前出の開業医はこう語る。獣医学部は一般の医学部と同様、たとえ卒業できたとしても、国家資格試験に受からなければ先には進めない。この地で学生たちを6年間見守った先には、何が待っているのだろう。筆者の中の「加計学園観察」は、これからも続いていくのだ。
(文・写真/吉野歩)
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