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『dele』最終回! 山田孝之と菅田将暉が紡いだ、白黒つけない物語

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山田菅田 dele Instagramより

 一筋縄ではいかない個性的な作品を送り出し、コアなファンを歓喜させているテレ朝ナイトドラマ。この枠に個性派俳優の代表といえる山田孝之、若手ながら山田にひけを取らない圧倒的な存在感をもつ菅田将暉がW主演を務めるドラマ『dele』が放映され、大きな話題になった。

 『dele』の類いまれなストーリー展開とスタイリッシュな映像は視聴者の目を釘付けにし、高い評価を得ている。

人の人生のdele(消去)をめぐって繰り広げられる人間ドラマ

 ある事件をきっかけに知り合った坂上舞(麻生久美子)の紹介により、「dele.LIFE」(ディーリー・ドット・ライフ)に勤めることになった真柴祐太郎(菅田)は、舞の弟で所長の坂上圭司(山田)のもとで働くことになる。

 地下にオフィスを構えるその会社の業務は、依頼人の死後にパソコンやスマホに残る記録を内密に抹消するというものだった。しかし、データの削除は簡単にできる作業ではなく、本当に削除が必要なのか依頼人の想いを読み解くことが必要だった。必要以上に依頼人の人生に関わりたくない圭司と、残した想いに寄り添おうとする祐太郎は時に衝突しながら、お互いに必要不可欠なパートナーとして成長していく。

2人の演技派俳優の共演が生み出す“普通ではない”世界

 役柄を憑依させる「憑依型」の俳優といえば、山田は群を抜く存在ではないだろうか。『闇金ウシジマくん』で演じた冷徹な闇金業者しかり、コメディアンとして新たな魅力を開花させた『勇者ヨシヒコ』でも、彼は演技を演技として行うのではなく、その人物の人生を淡々と生きているのだ。まるで現実に実在する人物のような錯覚に陥ってしまう。

 一方の菅田も、映画『共食い』で狂気を抱える思春期の少年役から、総理大臣の父親と人格が入れ替わってしまう難役を演じ話題になった『民王』まで振り幅が広い。彼が演じるキャラクターは、どんなに共通点があったとしてもすべて違う人物として目に映る。誰一人として似ていないのだ。山田と菅田が演じる人物たちに、「似たような役ばかり演じている」と評価する人はまずいない。唯一無二の稀有な存在と言っていいだろう。

白黒つけないラストに賛否両論

 山田と菅田が選んだ競演作が普通の作品であるわけがなく、このドラマの「普通ではない」要素は脚本にもある。ドラマの原作は本田孝好の小説『dele』。一話ごとに脚本が変わるため、主軸が同じでもテイストがまったく違う。これには演じる2人は大いに戸惑ったのではないだろうか。

 最先端のエンターティンメント作品と銘打つだけあり、ストーリー展開は秀逸。依頼人の想いを解き明かす謎解きのミステリーでもあり、心を揺さぶられる人間ドラマでもる。しかし、白黒つけないラストには賛否が分かれるかもしれない。人生には白黒つけられず、納得できないことをなんとか乗り越えなければならない局面が多い。

 だからこそドラマには夢と希望を与えてほしい。完璧なハッピーエンドを望む視聴者には敬遠されてしまうかもしれない。『dele』は夢物語ではない。しかし、痛みと悲しみを描いた物語でもない。痛みを伴う現実と向き合うからこそ、希望と救いが生み出される。

 第2話で、普段冷静沈着な圭司が依頼人の宮内詩織(コムアイ)の人生に触れ、心情を吐露する場面がある。親との確執により一人で生きてきた詩織は、スマホに自分の生前葬の動画を遺していた。友人たちによる温かな葬儀を見て圭司は言う。「もし俺が彼女だったら、両親に映像を見せたかった理由は復讐」。彼の抱える闇が見えた瞬間だ。彼は親に絶望していたのだろうか。心をえぐられる台詞だ。

 いまとなっては詩織の真意がどこにあったのか確かめる術はない。もしかしたら圭司が思うように復讐だったのかもしれない。しかし、友人たちの想いを受け取った両親はこれから幸せな気持ちで人生を送れるに違いない。我が子を幸せにできなかった自責の念から解放され、自力で幸せを手にした娘を誇らしく思うだろう。未来を感じさせるささやかな希望がそこにはある。

 ストーリーもさることながら、そのディテールにも感服せざるを得ない。オープニングからエンディングまで抜かりのないスタイリッシュな映像に、まるで上質な映画を楽しんでいるような高揚感を抱く。

演技派俳優の役者根性

 細部までこだわり抜いた圭司と祐太郎の2人のキャラクター性も圧巻だ。役作りに関して山田にはこんな逸話がある。プログラマーの圭司を演じるにあたり、専門用語の多い台詞に大変苦労した山田は、間違いがないようにゆっくりと喋ろうと決めていた。だが圭司という人間を突き詰めて考えた結果「この人はゆっくり喋る人じゃない」という結論に至り、早口で喋ることに変更を決めたそうだ。

 一方の菅田も祐太郎のキャラクターを追求すべく「80年代の雰囲気をまとう、日本人っぽくない雰囲気」というイメージを日々作り込み、髪の毛を長髪にして挑んだ。超が付くほど売れっ子の菅田が長髪にするという行動は、他の作品にも少なからず影響を及ぼすことになる。祐太郎へ懸ける菅田の並々ならぬ思い入れが感じられる。

 綿密なストーリー、役者によるキャラクター性の徹底、スタイリッシュな映像、どこをとっても面白くないはずがないこのドラマだが、見所はこれだけではない。『dele』は異色のバディ(仲間)作品である。従来のそれと反して、熱さがまったく感じられないのは、現代の世相を反映しているからなのだろうか。これまでのバディ作品といえば、そりの合わない2人が正義の名のもとに力を合わせ絆を深めあっていく作品が多い。しかし、圭司と祐太郎は違う。正義に悩み、苦しんで葛藤する。迷いながらお互いの欠けている部分を補い合っていくバディだ。冷静沈着で屈折した圭司と、明るく無邪気な祐太郎は一見相反しているように感じるが、お互いを許容し理解し合っている。決して熱い友情や絆が感じられる物語ではないが、2人の信頼関係がたしかに築かれていることは伝わるし、お互いがなくてはならない存在へと変化していく。

 物語も佳境に入り、2人が抱える過去と秘密が暴かれる時が近づいてきた。紆余曲折を乗り越えて絆を深めてきた圭司と祐太郎。2人にはいったいどんな秘密が隠されているのか。そしてバディを続けていくことはできるのか? 先の読めない結末にハラハラしながら、大いに期待したい。

福井原さとみ

映画と深夜ドラマが大好きなライター兼丸の内線沿線OL。新宿二丁目から代官山まで幅広く出没する。最近悩んでいることは、巨大化しつつある実家の豆柴犬のメタボ対策。

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