大坂なおみ帰国会見が新人アイドルのデビューイベントのようだったワケ

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 そして、もうひとつ気になったのが、彼女に対して執拗に日本語でのメッセージを要求していたことだ。<日本人の皆さんへ、日本語でなにかメッセージをお願いします>といった質問を投げかけられ、苦笑いをしながら<こんにちは。お寿司はすごく美味しい>と返すくだりもあった。

 彼女が流暢とは言い難い日本語で頑張って話すシーンはワイドショー受けするので、各テレビ局がそういう画を欲しがるのだろうが、はっきり言って差別的だ。

 9月10日放送『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日系)では、彼女が話す日本語を<オウエン…オウエン? シテ…クレテ アリガトウゴザイマス マタ ミニキテクダサイ><今はなんかすごく暑い アツイト チョットツカレタ><きょうの試合すごくガンバリマシタ 次の試合もガンバリマス><ウレシイト キンチョウシテタジャナイ 今はうれしいとなんか… レンシュウシタイ>などとカタカナ混じりで表記し、視聴者から不快感を訴える声も続出したばかりである。

 会見の最後には<大坂選手の活躍を受け、世界では日本人のイメージが変わったという報道もあります。大坂選手はどのように考えていますか>(前掲「AERA dot.」)という質問が出たのだが、それに対して彼女はこのように答えた。

<私は自分のアイデンティティについて深く考えません。私は私である、としか思っていないところが多いです。私が育てられてきたように生きてきた。テニスについては日本のスタイルらしくないとは思っています>(前掲「AERA dot.」)

 ここで彼女は、特定の国籍や文化によらず、自立する「個人」に立脚した、多様性のあるアイデンティティのあり方を提示した。しかし、会見場にいた報道陣のなかでここまでの問題意識をもち得た記者は果たして何人いただろうか?

 トップアスリートの親しみやすい一面を引き出すことも悪いことではないし、その流れのなかで抹茶アイスやインスタグラムの話が出るのも絶対的にダメなことではないのだが、あらゆる記者がそういった視点でしか質問を振ることができないのは問題だし、批判されてしかるべきことだと思うのである。

(倉野尾 実)

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