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住居も賃貸なら、家具もレンタルでいいんじゃない? という感覚は受け入れられるか

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Thinkstock/Photo by KatarzynaBialasiewicz

 近年、商品やサービスに対する考え方が変わってきている。たとえばクルマは長い間所有するものだったが、本来の目的を考えれば移動するためのツールだ。ならば、移動するときだけ使えれば良いというカーシェアリングやレンタカーで十分だという考え方が強くなってきている。

 また、映画や音楽、電子書籍の読書、アプリケーションの利用など、定額料金を支払うことで利用したいときだけデータを使うサブスクリプションというサービス形態も普及してきた。つまり、CDやDVD、書籍、アプリケーションパッケージなどを所有しなくても、利用したいときだけ利用できれば良いという考え方だ。

 ところがある分野ではこの考え方は古くから採用されていた。それが住居だ。住居は昔から、賃貸で利用するということが当たり前に行われてきたのだ。しかし、その賃貸住宅の中に置かれている家具は、自分で購入したものか備え付けのものを利用している。思えばちぐはぐな印象がある。それならば、家具もレンタルやシェアすれば良いのではないだろうか、という発想のサービスが始まっている。

個人宅向けインテリアレンタルサービスが登場

 CLASは、個人住宅向けとしては国内で初めてインテリアのレンタルサービスを始めた。個人ではなくオフィスを対象としたサービスでは、後述の「Kaggレンタル」などがある。

 CLASでレンタルが可能なインテリアには、月々500円台の椅子から1000円台のベッド、3000円台のシェルフといった単品から、8000円台の二人暮らし用ベッドルームセットなど、さまざまなアイテムが用意されている。

 インテリアのレンタルサービスは、転勤・転職、結婚、子どもの誕生など、ライフスタイルの変化に合わせて住居を変えるのであれば、住居に合わせて家具も気楽に変えられるほうがいいはずだというコンセプトで生まれた。

 しかも、気楽にレンタルできるために、料金には配送料や組み立て料が込みになっており、また、もしも汚したり傷を付けたりした場合でも、故意でなければ修理代などの追加料金は発生しないように、保険料も含まれている。

 レンタルした後の交換や返却も自由だが、最低利用期間に満たない半年以内での交換や返品には送料などの負担がかかる。用意されている家具はいずれもシンプルでベーシックな飾り気のないデザインになっており、どのような部屋にも馴染みやすいように配慮されているといえる。このようにさまざまな工夫が盛り込まれているため、利用者は新しい住居に引っ越して出費がかさんだときでも、わずかな初期費用で家具を揃えることが可能になる。

レンタル料金が低価格の仕組み

 CLASのホームページでレンタル料を見ていると、料金が非常に低く抑えられていることが気になる。類似のサービスであるKagg.jpでは、2年間のレンタル後、その商品を無償で譲り受けることができるとしている。これは、レンタルというより分割払いを行っているような印象だ。

 しかし、CLASの場合は配送料、組み立て料、保険料が込みでの低価格なのだ。これを実現するためにCLASでは、コストダウンのためのいくつかの工夫をしているという。

 1つは家具を中国の工場で自社生産し、原価率を抑えていること。次に、木材を素材にすることで、表面を削れば簡単に新品同様のきれいさを取り戻すことができ、複数の利用者に貸し出せるようにしていること。そして家具に5年などの長期の耐用年数を持たせることで、長く貸し出せるようにしている点だ。

 つまり、コストと利益の回収期間を長くすることで、個人の利用者が気軽に借りることができる価格設定を実現していることになる。しかし、このことは、まだサービスが開始された現時点では、本当に回収できるのかどうかが未知であるということにもなる。

「Kaggレンタル」は競合になるか

 CLASは個人向けのインテリアのレンタルとしては日本初だが、オフィスを対象としてインテリアのレンタルを行っているサービスに前出のKagg.jpがある。個人とオフィスという利用者の棲み分けで一見競合にならないように思えるが、すでにCLASには法人からの問い合わせがあり、またKagg.jpもいずれは個人利用者を取り込む可能性があるため、潜在的な競合関係にあると言える。

 Kagg.jpがいまのところ競合他社との圧倒的な差別化をはかっているのは、45万点に上る商品数だ。また、法人を対象としているため、たとえばオフィス用の椅子が一脚月額990円などCLASより高めに設定することができている。しかも2年間継続してレンタルした商品は、そのまま無償で譲り受けることができるため、CLASのように複数の利用者にレンタルされることよりも、同一の利用者から元を取ることが前提になっているようだ。

 そのため、CLASとは異なり、レンタルされる商品はすべて新品となっている。ただ、必ずしも長期間借りてくれるとは限らず、またオフィスにおいても中古インテリアの需要があることがわかっているため、いずれは中古品のレンタルや販売も視野に入れているという。このことでも、いずれはCLASと競合することになるのではないか。

家具をレンタルするという文化が根づくかどうか

 CLASは、社長の久保裕丈氏自身が、引っ越しのたびに家具を買い換える不便さから、家は賃貸でも構わないのだから家具も買わない選択肢があって良いはずだ、と思ったことがきっかけとなり生み出されたサービスだという。

 ところが事前登録を受け付けてみると、個人だけでなく法人からの引き合いも多いことに気づいた。たとえば民泊サイト・Airbnbの管理会社やコワーキングスペースの運営会社、ホームステージング事業者などだ。ホームステージングとは、売却予定の物件内をインテリアなどのコーディネートで見栄え良く演出し、購買意欲を高めるサービスだ。これらの事業者にとっても、初期コストを抑えて家具を調達できる仕組みに対するメリットがある。

 そこでCLASは法人窓口も用意している。すでに若い人達を中心に「所有」に対する考え方が変わってきている。CLASの成功は、家具が必要になった消費者に、「買う」だけでなく「借りる」という選択肢が自然に浮かぶようになるかどうかにかかっている。はたして、「家具は借りるもの」という発想がライフスタイルに組み込まれるかどうか、注目したい。

地蔵重樹

フリーライター。主に起業家が著者となる本のブックライティングやWebライティングを行う。経済、ビジネス、宗教、歴史、AIに興味あり。しげぞうのペンネームで『駅猫Diary』他の著書も有り。

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