いよいよ消費税10%、意外に知られていない消費税の実態とは

文=地蔵重樹
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Thinkstock/Photo by ThitareeSarmkasat

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 会社員なら、給与明細の所得税を見てがっかりし、自営業者なら顧客から振り込まれた金額が源泉徴収されていることにがっかりする。

 ところがじわじわと上げられてきた消費税については意外と無頓着だ。それは、一度に徴収される金額が低いことや、徐々に慣らされてしまったこと、そして、「仕方がない」といつの間にか諦めていることに原因があるのだろう。

 8月27日、麻生太郎財務相は来年の10月に予定されている消費税10%への引き上げについて、「今回は間違いなくやれる状況」とコメントした。いよいよ、1割もの消費税が徴収されることになる。

 しかも財務相は同時に、「過去上げたとき、大きな景気後退を招いたのは事実」などと述べている。ここは下手な漫才師でも「だったらやめればいいやん!」と相方が突っ込むところではないか。しかし、誰も突っ込みを入れていないようで不思議だ。これは、多くの人が消費税の実情について気づいていないためではないだろうか。

 そこで今回は、消費税の性質について再認識したい。

消費税で景気はどうなった?

 消費税は1989年に3%の税率で導入された。このときはバブルによる加熱景気の真っ只中であったため景気の失速はなかった。そのため多くの人が、「計算が面倒になるな」という程度に軽く受け止めていたのではないだろうか。

 ところが1997年に5%になると、前回の名目成長率7.3%が一気に0.8%まで落ち込む。すでにデフレになっていたからだ。また、因果関係を証明することはできないが、この年まで2万人台前半で推移していた自殺者の人数が、翌年から一気に約1万人増え3万人台に上昇して推移することになった(「厚生労働省 自殺者数の推移」)。

 しかも当時の橋本内閣が増税を閣議決定した前年には、株価が先行して暴落に転じている。それにつられて金融危機が発生し、1997年の終わりには三洋証券、北海道拓殖銀行、山一證券、日本長期信用銀行、日本債券信用銀行が破綻している。

 2014年に8%に上がると、実質成長率は2.0%だったが、実質はマイナス0.5%と景気の悪化が続いた。この過去の経緯から、少なくともデフレ時の消費税増税が景気を悪化させているようだとわかる。だから麻生財務相は「大きな景気後退を招いたのは事実」と述べたのだろう。

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