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虐待児だったオレを救ってくれたのは、右翼の先輩たちだった

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65歳にしてやっと普通の家庭が持てた

 そして17年、マサやんには新しい家族が一気に5人も増えた。奥さんと4人の連れ子たちだ。親父とトラックの集会に参加していた頃の顔見知りと、30年ぶりに再開したのだ。「親父が引き合わせてくれたのかな」と、同棲することに。一番下の子が中学生。微妙な時期なんで、まだ籍は入れてないんだけど、みんな慕ってくれる。

 マサやんは、一回り以上年下の奥さんを「オンナ」と呼ぶ。「犬と同じように太っちゃってさ。もうトドだよ、トド」と笑いながらも、喜びは隠しきれない。

「オレは晩成型って言われてきたけど、65歳にしてやっと普通の家庭が持てた。これが家族かってしみじみ。オレは身体を洗うときに亀の子だわしを使うんだけど、唯一届かない背中の真ん中を、オンナが丁寧にかいてくれるのね。そのとき、『あーーーーー気持ちいい!』って心から思うんだ。いまだにトラックで仮眠していると、昔のことを思い出してハッと目が覚めることもある。でも憎いという想いは消えてきている。今、目の前に守りたいものができて、過去にかまうヒマがなくなったのかも」

 1枚だけ残っているという、マサやんが幼い頃の家族写真を見せてもらった。モノクロームの写真に、日の当たる縁側の前で親戚一同がそろっている。真っ先に目にはいるのは、マジックで黒く塗りつぶされた父親と継母の顔だ。髪の毛一本の形跡も許さないというような広い範囲で、四角く塗りつぶされている。かっぽう着姿の継母の膝の上には、ぎこちなく抱きかかえられて、うつむき気味な幼いマサやんの姿があった。

 あのとき知らなかったものが、今は手元にある。もう少し先には、笑顔が満開のカラフルな新しい家族写真を見せてもらえるのだろう。

(文/帆南ふうこ)

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