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風疹・麻疹は防げる感染症 妊娠中に打てないワクチンと、妊娠中・授乳中でも打てるワクチン

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 8月に開かれた外来小児科学会で、患者さん、家族など当事者の会の皆さんに会いました。トーチの会、VPDの会などたくさんのブースがあり、風疹をなくそうの会『hand in hand』では、代表の可児さんが「2012-13年の流行の時に先天性風疹症候群になった子です」とある男の子を紹介してくれました。その元気な子は、じょうずな手話でニコニコ話しかけてくれました。

 先天性風疹症候群は、先天性心疾患、難聴、白内障が主な症状で、妊娠初期にお母さんが風疹に感染することで子どもがかかります。テレビドラマの『コウノドリ』(TBS系)にも出てきましたね。ワクチンで防げる病気があることは女性も男性も変わりなく、知っておいてほしいと思いました。地球上にある多くの感染症の中で、ワクチンがあるものはほんの一握りなんです。

 風疹対策として、小学校に上がる前に、麻疹・風疹混合ワクチン(MRワクチン)を2回打つことができます。公費負担の定期予防接種なので無料。その2回ワクチンを打っていれば99%の人で抗体が十分上がり、感染予防できます。MRワクチンの接種率はとても高く、子どもでは95%を超えています。

 それでも、海外から持ち込まれた風疹や麻疹が限定的に流行するのは、抗体のない大人が多いから。一般に、ウイルスに自然感染した場合の免疫も一生涯続くわけではなく、30-40年と言われています。ワクチンを受けた覚えがない人、1回しか受けていない人、小さい頃にかかり40歳以上になった人は要注意です。

 感染対策には風疹ワクチンを打つのではなく、MRワクチンをお勧めします。なぜなら、風疹も麻疹も報告される感染者のほとんどが大人だから。沖縄から始まり、各地に広がった麻疹の感染がニュースになったのは2018年の春のこと。麻疹も風疹も、数年ごとに感染者を増やしています。さらに、来日する観光客数が年々増え、海外旅行する人も多いので、感染症のリスクも増加しています。

 ということでどちらも同時に予防するためにも、麻疹と風疹両方の免疫がつくMRワクチンを2回打つ方が合理的です。内科や小児科で打つことができるので、電話して確認してみてください。料金は自費なので医療機関によって違いますが、MRワクチンはだいたい1万円前後です。何も症状のない人がわざわざ医療機関に行き、高いワクチンを受けることに抵抗があると思いますが、受けないままだと、誰かを先天性風疹症候群にしてしまうリスクとその医療費を保険料として大勢で負担する、つまり医療費を上げてしまうというリスクが遺されてしまいます。

 ただ、MRワクチンは生ワクチンなので、妊娠している人は打つことができません。他にも生ワクチンには、風疹、麻疹、水ぼうそう、おたふく風邪、BCGがあります。ただし、授乳中に打つことは問題ないので、妊娠初期の検査で抗体価が低いことがわかった人は、産後早いうちに打つようにしましょう。

 妊娠中に受けることができるワクチンもあります。B型肝炎、A型肝炎、ジフテリア、百日咳、破傷風、不活化ポリオ、肺炎球菌、これからの季節でいえばインフルエンザも妊娠中・授乳中にかかわらず受けられます。特に、百日咳とインフルエンザのワクチンは、妊娠中のお母さんが受けていると胎内で抗体が移行して、生まれてすぐの赤ちゃんを守ることができるということがわかっているので、お勧めです。

 今、風疹の流行がニュースになっています。すでに、流行した2012−2013年に匹敵するくらいの報告数です。今回もまた、タイムラグを置いて先天性風疹症候群が発症するかもしれません。個人的には健康診断の際に、各種ウイルスの抗体価も調べてくれればいいのにと思うのでずが……まずは大人も子どもも、ワクチン歴をぜひ確認してみてください。

森戸やすみ

小児科専門医。一般小児科、NICU(新生児特定集中治療室)などを経て、現在は世田谷区にある『さくらが丘小児科クリニック』に勤務。朝日新聞アピタルで『小児科医ママの大丈夫! 子育て』を連載中。Wezzyでも。医療者と非医療者の架け橋となるような記事を書いていきたいと思っている。

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