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「新潮45」が炎上している今、読んでほしいマンガ

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トランス男子のフェミな日常/遠藤まめた

トランス男子のフェミな日常/遠藤まめた

 自民党の杉田水脈衆議院議員が寄稿して今夏批判を浴びた「新潮45」(新潮社)がまた燃えている。最新の特集号で組まれた特別企画『そんなにおかしいか「杉田水脈」論文』は、LGBTへの差別的な文章を並べてガソリンをまいたもので、人が傷つくことや悲しむことをわかってこそ企画されたものだ。私はこういうやり方は保守でもなんでもない、ただのヒューマニズムの否定だと思う。いじめと同じで、追い詰めて相手が怒ると「こわぁい。本当は弱者じゃないんだろ」と彼らは言うのだ。

 雑誌については、すでにたくさんの人が批判しているから詳細は省く。私が今思っているのは「ほかに読んでほしいもの」をもっと広めたいなということだ。義憤にかられた人たちがヘイト雑誌を手に取っても、そこに書かれているのはデマだったり、おパンツな内容だったりするのである。正確な知識や、今LGBTが置かれた状況のわかるもの、ユーモアや優しさのあるものこそ広めたい。LGBTが言いたい放題されるのは嫌だけど、自分はそこまで詳しくないし、周りに何を広めたらよいか分からない人もたくさんいるだろう。

 そこで、私としては、この機会に大分県の人権啓発マンガ「りんごの色 LGBTを知っていますか」がすごい、という話がしたい。

 これは『ハケンの品格』(講談社)などの作品で知られる漫画家の平田京子さんが絵を描いていて、読み物としてもすごく面白い作品だ。ヘイト雑誌は買わないと読めないけど、この冊子はインターネット上から無料で見られる

 内容も、単にLGBTと呼ばれる人たちがいます、というだけでなく、一人ひとりが異なる存在であることに焦点を当てていて、悪者キャラっぽい先生の伏線回収シーンなんて鳥肌モノだ。「りんごの色」は、大分県内では学校や公共施設で配布されているほか、ローソンにも置かれているらしい。杉田水脈議員は、LGBTの人たちは子どもを持たず(これもデマなのだが)生産性がないから税金を使うことに理解を得られないだろうと言っているが、税金のおかげで私たちはこのような作品を無料で楽しむことができる。2018年は、LGBTに対するヘイト雑誌が話題になる一方で、こういう素晴らしい啓発が自治体によって行われている年でもあるのだ。

 学校の先生や子どもたちに関わる人たちには、大阪市淀川区役所、阿倍野区役所、都島区役所が3区合同で作った教職員向けのリーフレット「性はグラデーション」をオススメしたい。これもインターネットから無料でダウンロードできる

 もっと詳しくLGBTについて知りたいとか、素晴らしい文学に触れたいという方は、東京レインボープライド2018にあわせて紀伊国屋書店で行われた「LGBTについて知る100冊」のラインナップがこちらに掲載されているので好みのものを手に取ったり、地元の図書館に入荷リクエストを出したりするとよいと思う。

 ちなみに私が8月に出した『オレは絶対にワタシじゃない トランスジェンダー 逆襲の記』(はるか書房)も、既刊の『先生と親のためのLGBTガイド』(合同出版)もすごく面白いよ、とオススメしたいのだが、あまりやりすぎると露骨なので、この辺はパンツをはいておこう。

 残念な雑誌は確かにあるけれど、素晴らしい本やマンガ、雑誌も人生をかけて読みきれないほどにあるんだよ。

遠藤まめた

1987年生まれ、横浜育ち。トランスジェンダー当事者としての自らの体験をもとに10代後半よりLGBT(セクシュアルマイノリィ)をテーマに啓発活動をはじめる。主にLGBTの若者支援や自殺予防に関わる。著書に「先生と親のためのLGBTガイド 〜もしあなたがカミングアウトされたなら」(合同出版)ほか。

twitter:@mameta227

サイト:バラバラに、ともに。遠藤まめたのホームページ

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