9月18日発売の「FLASH」(光文社)が、「東京ディズニーランド」の暗部を報じている。ディズニーランドで働くキャスト2名が、度重なるパワハラや過酷な労働環境によって心身に不調をきたし、運営する株式会社オリエンタルランドを相手取って訴えを起こしているという。夢の国の内部で、いったい何が起こっているのか。
「FLASH」で語られたのは、千葉県の労働組合「なのはなユニオン」の代表・鴨桃代氏の言だ。「なのはなユニオン」に相談を持ちかけたのは、2008年からキャストとして働く契約社員のAさん(30代後半、女性)。Aさんは2013年、着ぐるみを着用しての勤務中に客のいたずらによって右手薬指を負傷。株式会社オリエンタルランド(以下、オリエンタルランド社)に労災申請したところ、「それくらい我慢しなきゃ。君は心が弱い」と言われ、取り合ってもらえなかったという。
さらに、これを発端としてAさんへのパワハラが頻発する。Aさんが勤務中、バックステージで過呼吸の発作を起こした際は、「次に倒れたら辞めてもらう」「病気なのか。それなら死んじまえ」などと、暴言を吐かれたという。Aさんは精神的に追い詰められ、現在は休職中という。
また、2015年からキャストとして働いている契約社員のBさん(20代後半、女性)も、被害を訴えた。Bさんは総重量10~30キロほどの着ぐるみを着てショーなどに出演していたが、2016年頃から手に違和感を覚え始める。2017年1月に激痛が走り、とうとう手の感覚がなくなって病院を受診すると、医師から「胸郭出口症候群」と診断されたという。勤務中、キャラクターを演じるために絶えず腕を上げ続けていたことによる血流障害だった。過酷な労働条件下で勤務を続けることは困難だったが、オリエンタルランド社は労災申請手続きもせず、休業補償もされなかったという。また、記事によれば、着ぐるみのキャストだけではなく、ショーに出演するダンサーも衣装の重さで腰を悪くしていたり、骨にひびが入っていたりと満身創痍で、生活のために我慢して勤務を続けているキャストも多いという。
今年7月、AさんとBさんはオリエンタルランド社を相手取って千葉地裁に訴えており、初公判は11月を予定している。
次々と暴かれた、夢の国のブラックっぷり
オリエンタルランド社のパワハラ意識のレベルや、労務管理の質の低さには呆れるばかりだが、さらに気になるのは、訴えを起こしたAさんとBさんがともに契約社員と報じられている点だ。とくに、Aさんは勤続10年を超えているではないか。
もちろん、AさんとBさんが、契約社員という雇用形態を望んでいるならば問題はない(「FLASH」記事の論点は労働契約ではないため、記述されていない)。しかし、ディズニーランドについては、数年前から「ブラックバイト」の噂が絶えない。
ディズニーランドの現場を支えるのは、「準社員」と呼ばれる19,006人(2018年4月1日現在)の労働者だ。オリエンタルランド社の公式サイトによると、準社員の役割とは、〈アトラクションでの案内、清掃、飲食施設での接客、調理業務、商品販売や在庫管理など、ゲストのハピネスに直結する、ホスピタリティ提供の中心を担う〉とある。つまり、現場で勤務に当たるキャストというわけだが、それにしても約2万人ものキャストがバイトで、非正規労働者というのは衝撃的だ。
ディズニーランドではインターネット上での常時募集のほか、季節の変わり目に大規模なキャスト募集をかけており、ホテルを会場に行われる面接会には、一度におよそ5000人もの応募者が集まるといわれる。一般的なバイトの選考では考えられない光景だ。ディズニーランドは約2万人ものバイトを抱えているのだから、一定の新陳代謝は仕方ないことだとしても、これには大量募集・大量採用でキャストを“使い捨て”にしている側面もあるのではないか。
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