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ブラック企業叩きで損をするブラック企業社員
今、世の中で一番の嫌われ者といえば、ブラック企業だろう。ネット上で叩かれない日は珍しいくらいだ。先日も台風の中、出社を強制するブラック企業があるといってさかんに非難されていた。
最初に断っておくと、労働条件の悪い会社を安易にブラック企業と呼び、やたらとバッシングする風潮を私は良くは思わない。
もちろんそこで働く人は不満や怒りを抱えるだろう。しかし外野からブラック企業のレッテルを貼られてイメージが悪化し、客離れが起きて業績が悪くなれば、割を食うのはすでにそこで働いている社員自身だ。待遇が悪くなることはあっても、良くなることは決してない。
最悪なのは、世間のブラック企業叩きを受けて、政府が規制に乗り出すことだ。労働は政府の画一的な規制にはなじまない。
労働時間ひとつとっても、人がどの程度の長時間労働を受け入れるかは、仕事の性質ややりがい、ライフスタイル、健康状態や家計の状況などによって千差万別だ。一律に制限すれば、それ以上働きたいという人の人生設計を狂わせるだけでなく、経営効率が悪化し、海外企業をはじめ、競合との戦いが不利になって、結局は大幅なリストラを強いられかねない。
ブラック企業の社長に就任し、業務改革を進める魔王たち
ブラック企業のもっと良いなくし方はある。政府の力に頼らず、会社自らが変わることだ。ただし、それには必要なことがある。ベニガシラ他『魔王などがブラック企業の社長になる漫画』(一迅社)を読むと、そのヒントがわかる。
ツイッターで話題になり、15万リツイート、20万いいねを獲得したという「魔王がブラック企業の社長になる漫画」など全9編を収める。魔王をはじめ、現実にはあり得ないさまざまなキャラクターがブラック企業の社長に就任し、大胆な業務改革を進める。
魔王社長は、仕事が終わらないと徹夜を覚悟する社員に対し「愚かなり人間」と一喝。仕事に優先順位をつけたうえで「体調を万全にして戦うのは常識である」と帰宅を命じ、魔法で瞬時に自宅まで送り届ける。会社の業績が大幅にアップすると、「成果には対価を与える。これは上に立つ者の義務である」と人間たちにボーナスをはずむ。
外国からやって来たお姫様社長は、古いパソコンをすべて最新機器に取り替えたうえ、それまでのサービス残業分の給料を自分のポケットマネーで払ってくれる。人間を孤独に陥れようとたくらむ「邪神ちゃん」社長は、大勢の社員が集まるだけで内容に乏しい会議を、世代間交流を深めるための儀式と誤解。会議の廃止を命じ、報告は文章で簡潔に行い、打ち合わせは極力少人数で済ませよと指示する。