
日本代表としてワールドカップでプレーする川合裕人氏
アンプティサッカー・ワールドカップメキシコ大会2018が10月24日から11月5日まで開催される。日本代表は2010年、日本で競技が普及して以来2010年、2012年、2014年と3大会連続でワールドカップに参加している。
アンプティサッカーとは
事故や病気によって手足を切断した選手が松葉杖をついてプレーするアンプティサッカー。30年以上前にアメリカの負傷兵が、リハビリの一環として松葉杖をついてプレーするサッカーを始めたのが、アンプティサッカーの起源と言われている。
フィールドプレイヤー6名とゴールキーパーが、25分ハーフ、7対7で40m×60mのコートで戦う。フィールドプレイヤーは主に片足の切断者で、日常生活で使われる通常の松葉杖「クラッチ」をついてプレーする。
GKは主に片腕を切断しており、片腕だけでプレーする。障がいの度合いは選手ごとに異なるが、できるだけ同条件でプレーし、勝敗を競い合う。
2018年現在、全国各地に9チームのアンプティサッカーチームが活動している。主な国内大会として日本アンプティサッカー選手権大会、レオピン杯が開催されている。
前回大会を上回る結果を残すことを目標にする日本代表。元日本代表キャプテン・川合裕人氏にアンプティサッカーの魅力、現状、今後のビジョンなどを聞いた。

現在、大阪でうどん屋を経営している川合裕人氏
三重県からさいたま市まで、クルマで片道6時間かけ練習に参加
ーーアンプティサッカーとの出会いを教えて下さい。
「21歳のとき、交通事故で左足を太ももの中ほどで切断しました。当時、トラック運転手をしながら社会人チームでプレーしていましたが、職を失い、もう二度とサッカーはできないと思いました。
それでもサッカーに関わりたいという思いから、息子のサッカーチームや地元の女子フットサルチームでコーチなど務めていました。プレーがしたい。その思いがコーチをしているときも消えることはありませんでした。
そんなとき、2010年、日本が初出場したアンプティサッカーワールドカップの特集番組をテレビで観ました。
『これなら俺も、もう一度サッカーができるんじゃないか』
そう思い、アンプティサッカーという名前だけ必死に覚えたのを記憶しています。三重県に住んでいましたが、アンプティサッカーの練習があるのはさいたま市。クルマで片道6時間をかけて月3回参加しました」
ーー片道6時間、練習に参加して三重に戻るというのは簡単ではないと思いますが。
「苦労も多かったですが、もう一度サッカーをプレーできるという喜び、楽しさが勝っていました」
アンプティサッカーの認知度は、当時はないに等しい状態
――2012年に関西でチームを立ち上げました。経緯を教えてもらえますか。
「さいたま市で練習参加していた選手の一人が、九州でチームを作りたいという話を聞きました。自分も関西を中心に広めていくことができないかと思い、関西セッチエストレーラスを2012年1月に立ち上げました」
――チーム作りで苦労した点は?
「まず、どこから手をつければ良いのかという問題がありました。アンプティサッカーの認知度は当時はないに等しい状態でした。福祉施設・障がい者スポーツセンターなどを回りましたが、相手にされず門前払いされることも何度もありました。
諦めかけたとき、ある施設を訪れた際に話を聞いてもらうことができ、理学療法士の増田(現・関西セッチエストレーラス代表)と知り合い、監督として加わり、選手として冨岡忠幸、田中啓史も含めて立ち上げることになりました」
ーー関西で広めたい。そこから本格的な活動を始めるのにどのくらいかかったでしょうか。
「関西でチームを作りたいと思い、活動するまでに1年ほどかかりました。そこからメンバーが集まらない時期があり、アンプティサッカー協会にチーム登録するのにも時間がかかりました。
自分が2012年に開催されたワールドカップ日本代表に選出されたこともあり、メディアへの露出が増え、少しずつメンバーが集まり本格的な活動を始めることができました」
日本代表キャプテンとしてワールドカップを戦い感じたこと
――2012年、2014年と日本代表のキャプテンとしてワールドカップを戦いました。世界との差で感じたことはありますか?
「2012年ロシア大会では予選リーグ5試合を通して勝ち点1しか取れませんでした。日本はアンプティサッカーという競技を始めたばかりでしたが、中東をはじめ南米ではすでに競技の完成度が高かったです」
――完成度が高いというのは?
「一般的なサッカーと同じレベルでプレーしている状態です。パス回し、ダイレクトプレー、シュートや戦術も含めてサッカーを知っている戦い方をしているという言い方がわかりやすいかもしれません。
強豪国はすでにアンプティサッカーを(高いレベルで)楽しんでいるという印象が強かったです。日本代表はそのレベルに達していないこともあり、選手を含めチームとして一人一人に余裕がありませんでした」
――2018年10月、メキシコでワールドカップが開催されます。期待されていることはありますか?
「前回大会(決勝トーナメント1回戦敗退)を上回る成績を残してほしいと思っています。自分はすでに現役を引退しましたが、若い世代を中心に頑張って欲しいと願っています」
1 2