連載

「自分は長生きしないから」に注意! 老後のお金を考える上で外せない寿命の話

【この記事のキーワード】
生き延びるためのマネー/川部紀子

生き延びるためのマネー/川部紀子

 ファイナンシャルプランナーで社会保険労務士の川部紀子です。今年も最新の平均寿命が発表されました。厚生労働省の「簡易生命表」によると、日本人の平均寿命は女性87.26歳、男性81.09歳で、いずれも過去最高を更新しています。

 世界的に見ても、女性が香港に次ぐ2位、男性は香港、スイスに次ぐ3位ということで、日本が長寿の国であることは間違いありません。このような話になると、必ず「自分はそんなに長生きしないから」と言う人が出てくるものです。果たして本当にそうなのでしょうか? 今日は拙著『まだ間に合う 老後資金4000万円をつくる! お金の貯め方・増やし方』(明日香出版社)でも詳しく書いた、「老後のお金の話」をしたいと思います。

平均寿命の定義を知っていますか?

 厚生労働省は、毎年年齢ごとの死亡率などから、「平均であと何年生きるか」を発表しています。これを「平均余命」と言い、男女別に0歳から105歳以上まで1歳刻みでデータを見ることができます。

 例えば、0歳の平均余命は女性87.26歳、男性81.09歳。もうお気付きでしょうか? 毎年発表されている平均寿命とは、亡くなる年齢の平均ではなく「0歳の平均余命」なのです。

 つまり、不幸にして幼い頃に亡くなったケースを含めた平均になりますので、少し年齢が下がっているのです。この記事を読んでくださっている方は当然0歳ではないので、平均余命を考えると、発表されている平均寿命よりも長く生きる計算になるということです。

 いくつかの年齢のデータを男女別に紹介します。年齢に平均余命を足したものを「年齢ごとの寿命」として記載しました(平成 29 年簡易生命表より)。

kawabegraph0924

 謙遜の面持ちで「自分はそんなに長生きしないから」という人は多いのですが、この表のデータからわかる通り、むしろ平均寿命よりも長く生きることを想定すべきなのです。 また、半分笑い話ですが、長生きしないと言う人に限って長生きする、なんていうことも実際によくあるものです。

「人生100年時代」は案外リアルな現実

 老後の「お金」という意味でも、少し余裕を持って慎重に考える方が安心でしょう。表の最下段、女性90歳以上、男性85歳よりも長く生きることを見据える必要性を感じます。

 実際に何歳で亡くなる人が最も多いのかを調べてみたところ、単純に死亡者数が最も多いのは女性が93歳、次いで94歳、男性は87歳、次いで88歳です。90歳まで生きる割合も、男性が25.8%と4分の1以上、女性は過半数の50.2%です。少し驚いた方も多いかもしれません。しかし、これが実態なのです。

 厚生労働省でも「国民の健康意識の高まりや医療技術の改善で、寿命はまだ延びていく余地がある」とさらなる長寿を示唆しています。

 政府が2017年9月に「人生100年時代構想会議」を設置し、同年末のユーキャン新語・流行語大賞にもノミネートされた「人生100年時代」という言葉ですが、単なる流行語ではなく、リアルな言葉だと考えるべきなのです。

老後のお金をどうかき集めるか

 長生きに伴い、その分のお金も必要になります。

 これからの一般生活者にとって、まず外せないことは働くことによる収入です。60歳以降も生活していけるだけ稼げることは大変な強みになります。そのためにも心身の健康状態は重要です。

 その際に参考になるのは、厚生労働省が発表する「健康寿命」です。健康寿命とは、介護状態や寝たきりではなく、日常生活を送れる年齢のこと。最新データでは、男性72.14歳、女性74.79歳となっています。仮にここまで働くことができたとしても、まだまだ15年から20年は生きていく、といったところでしょう。

 生涯現役で働き続ける人は限られます。そこで次に考えなければいけないのが「年金」です。

 現状65歳から受け取れる年金は、今後68歳など後ろ倒しのスタートが想定されます。しかし年金は、制度上、長生きに非常に強い性格です。一生涯受け取ることができる「終身年金」という仕組みになっていますから、生きれば生きるほど受給総額が増え続けるのです。終身年金に関しては日本の年金制度の最大の特徴でもありますし、法改正でテコ入れするという話も一切出ていません。

 年金をできるだけ多く受け取るには、会社員・公務員の「厚生年金」も重要です。個人事業主や専業主婦(扶養の範囲内のパート主婦)は厚生年金がないので他で用意することを意識しなくてはなりません。

 また、無視できないのが退職金と親の遺産です。当てにしないことを美徳とする風潮、慎重な性格ゆえ「無いものとする」と言う人も見受けられますが、退職金「有り」の場合は、ごく一般的な会社員や公務員として新卒から勤め上げれば1000万円~3000万円が見込めます。また、日本の1800兆円を超える金融資産の約7割は60歳以上が保有しており、実際に会社員や公務員だった親の遺産が数千万円から1億円近かったという話も大袈裟ではなく多々あります。

 この場合、過度な不安を持つことなく、経済を活性化するためにも消費をけん引する側に回っていただきたいと思います。ひたすら老後のためのお金を貯める努力をするだけでなく、自分が置かれている状況をまずは確認してみましょう。

 冷静に考えて、自分はどこを取っても「弱い」と確信したのであれば早い対策が不可欠です。老後のお金をつくるという意味では確定拠出年金が最適だと考えています。「確定拠出年金って実際どうなの?」と言っている間に何年も経ってしまいますので、とにかく行動に移してほしいです。

川部紀子

ファイナンシャルプランナー(CFP® 1級FP技能士)。社会保険労務士。1973年北海道生まれ。大手生命保険会社に8年間勤務し、営業の現場で約1000人の相談・ライフプランニングに携わる。その間、父ががんに罹り障害者の母を残し他界。自身もがんの疑いで入院する。母の介護認定を機に27歳にしてバリアフリーマンションを購入。生死とお金に翻弄される20代を過ごし、生きるためのお金と知識の必要性を痛感する。保険以外の知識も広めるべく30歳でFP事務所起業。後に社労士資格も取得し、現在「FP・社労士事務所川部商店」代表。お金に関するキャリアは20年超。個人レクチャー、講演の受講者は3万人を超えた。テレビ、ラジオ等のメディア出演も多数。新刊『まだ間に合う 老後資金4000万円をつくる!お金の貯め方・増やし方』(明日香出版社)が発売中。

twitter:@kawabenoriko

サイト:FP・社労士事務所 川部商店 川部紀子】

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。