サマータイムは百害あって一利なし 予想される健康悪化と膨大なコスト

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Thinkstock/Photo by seb_ra

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 東京オリンピック・パラリンピックまでにサマータイムを導入するという話が出ている中、欧米ではサマータイム廃止論が持ち上がってきた。

 すでにサマータイムを導入していたEUでは、欧州委員会がサマータイム制度の廃止を提案している。また、米国ではマサチューセッツ州など4州がサマータイム廃止を検討する委員会を立ち上げている。このように、海外でサマータイムの弊害が明らかになった以上、このまま日本で導入することには問題がある。

サマータイム廃止に向かうEU

 EUではEU法でサマータイムの実施が定められている。具体的には3月の最終日曜日に時刻を1時間早めて、10月の最終日曜日に戻すことになっていた。

 ところが近年、サマータイムを廃止しようという議論が広まってきたのだ。そこでEUでは市民に聞き取り調査を行ったのだが、460万件以上の意見が出され、しかも8割以上が廃止を求めていたことから、欧州委員会は2019年10月からというかなり性急なスケジュールでサマータイムを廃止するよう、欧州議会に対して提言した。この背景には、サマータイム導入によるさまざまな弊害が浮き彫りになってきたことがある。

EUに見えてきたサマータイムの弊害

 EU市民がサマータイム廃止を訴えている理由は、年に二度時刻変更を行うことの煩わしさと、実際に体調が悪くなるという弊害を身をもって感じたためだ。そもそもEUのサマータイムは、2回の世界大戦時に省エネのために導入することが検討されたもので戦後は廃止されていたのだが、1970年代のオイルショックが起きると再び導入されたのだ。

 しかし、現在ではサマータイムが省エネにさほど寄与していないことがわかった。それどころか、サマータイムによる体調不良を訴える人が多いことがわかってきたという。

米国でも弊害が問題視され始めた

 一方、米国でもサマータイムが健康に悪影響を与えているという懸念が出され、州によっては廃止に向かって動き出している。たとえばカリフォルニア州ではサマータイムの是非を問う住民投票が11月に行われる。マサチューセッツ州など4州でもサマータイム廃止を検討する委員会が設立された。

 ただ、いずれも連邦議会の承認が必要なことと、州により時間が異なってしまうと交通機関の調整の難しさによる混乱もあるため、簡単には廃止とはならないと見られているようだ。

 しかし、このように廃止論が盛り上がってきたのは、夏時間に切り替えた直後の月曜日になると、心臓発作のリスクが25%高まるという研究結果が出たことなどがある。

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