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「新潮45」の暴走を招いた「出版不況」と、過激な右派論壇のニーズ

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「新潮45」(新潮社)2018年10月号

 2018年10月号に掲載された特別企画「そんなにおかしいか『杉田水脈』論文」の記事が大炎上し、「新潮45」(新潮社)の休刊が発表された。

 LGBT当事者や関係者を不当に傷つけたうえ、社会にまん延する差別や偏見を助長するような原稿を複数回にわたって掲載したことは看過できるものではない。新潮社はとかげの尻尾切りのように「新潮45」を休刊させて終わりにするのではなく、このような状況をつくり出してしまった過程と要因をきちんと洗い出し、検証する必要があるだろう。

 そして、もうひとつ考えておかなくてはならないのは、この問題は新潮社だけに限らず、出版界全体にまたがる問題であるということだ。

 9月25日に新潮社から出された「「新潮45」休刊のお知らせ」では、「新潮45」が今回のような問題を引き起こしてしまった原因について、<ここ数年、部数低迷に直面し、試行錯誤の過程において編集上の無理が生じ、企画の厳密な吟味や十分な原稿チェックがおろそかになっていたことは否めません。その結果、「あまりに常識を逸脱した偏見と認識不足に満ちた表現」(9月21日の社長声明)を掲載してしまいました。このような事態を招いたことについてお詫び致します>と記されていた。

 「新潮45」はもともと、犯罪や事件のドキュメントで読者を惹き付けていた雑誌。特に、死刑判決を受けていた元暴力団員が表沙汰になっていなかった3件の殺人事件を告白した手記(2005年11月号掲載)は多くのメディアも後追いし、山田孝之が主演した映画『凶悪』のモデルともなった(映画内の雑誌名は「明朝24」となっている)。

 「新潮45」が、現在のような過激な保守オピニオンを掲載する方向に舵を切った要因のひとつは、前掲した「「新潮45」休刊のお知らせ」にある通り、雑誌の部数減にある。2018年9月27日付朝日新聞によれば、最も売れた2002年1月号で5万7359部もあった実売部数は、現在では1万部前後にまで下落。それに伴い編集部の人員も減らされ、最終的には編集長も含めた6人で編集を行っていたという。

 そんな背景のなかで「新潮45」は、方向性を変えていく。「新潮45」は今回取り上げられたLGBT差別以外にも、レイシズムを喚起するような記事も載せるようになっており、実際、2018年9月号では「「日本喰い」中国人」なる特集を組んで、ヘイトを煽るような誌面を作成していた。

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