社会

「新潮45」の暴走を招いた「出版不況」と、過激な右派論壇のニーズ

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 こういった路線は、ここ最近の右派系論壇の傾向でもある。前掲朝日新聞のなかで社会学者の奥武則氏は、<右派系論壇誌の勢力図も様変わりしている。書店で平積みされているのは『WiLL』や『月刊Hanada』など過激さをウリにする新興の雑誌だ。ネットで飛び交う新しい言葉の応酬や決めつけに慣れてしまい、むき出しの言葉ばかりが並ぶようになった>と指摘している。

 ここで名前のあがった「WiLL」はワック、「月刊Hanada」は飛鳥新社と、中小の出版社から刊行されている雑誌だが、新潮社以外の大手出版社も、過激な言説を売りとするヘイト本の人気に乗っかり、その隆盛に手を貸している。

 その典型例が、<「禽獣以下」の社会道徳や公共心しか持たない><自尊心を保つためには、平気で嘘をつくのが韓国人>といった言説で差別を煽り、47万部も売り上げているケント・ギルバート『儒教に支配された中国人と韓国人の悲劇』。この本は講談社から刊行されている。

 「新潮45」は世間からの猛批判を浴び、今回のような結末を迎えたが、それでも、ヘイトを煽り立てるような本が手堅い商売として成り立ち、書き手も発表する媒体も存在している以上、「新潮45」の1誌がなくなったところで、現在のような状況は変わらないだろう。

 事実、「新潮45」休刊の原因をつくった杉田水脈衆議院議員は、2018年8月号に寄稿した論考が大炎上した後も、これといった釈明や謝罪をすることもなく沈黙を保って国会議員を続けている。今後も弱者の権利を踏みにじるような原稿をどこかの媒体に寄稿するだろうし、その原稿を欲しがる出版社も確実に存在するだろう。

 また、「そんなにおかしいか『杉田水脈』論文」特集のなかで最も問題とされる原稿を寄稿した小川榮太郎氏も、これによって筆を折るような事態にはもちろんならない。9月26日には「月刊Hanada」2018年11月号の対談企画に出演する旨の宣伝をツイートしているが、前述したような過激な右派論壇誌がビジネス上のニーズを保ち続ける限り、そういった媒体に寄稿し続けるだろう。

 「新潮45」騒動が炙り出した出版界の問題は根深い。

(倉野尾 実)

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