子どもを乗せた自転車が倒れる事故、親は八方塞がり

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Thinkstock/Photo by m-imagephotography

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 神奈川県警は今月14日、電動自転車で走行中に転倒し、抱っこしていた当時1歳4カ月の男児を死亡させたとして、横浜市の母親を過失致死の疑いで書類送検した。

 母親は前部の幼児用座席に当時2歳だった長男を乗せ、次男を抱っこひもで前に抱え保育園に送り届ける途中だった。当日は雨が降っていたため母親はかっぱを着ており、左手首に傘をかけた状態で走行していたらしい。だが、提げていた傘が自転車のフレームと前輪の泥よけの間に挟まったことで、ハンドルが動かなくなり、転倒につながったと推測されている。また、ヘルメットをかぶっていた長男に怪我はなかったようだ。

 非常に痛ましい事故ではあるが、決して珍しいケースではない。消費者庁の調べによると、平成23年から平成28年までの6年間で、幼児用座席付自転車での走行中、怪我をして緊急搬送された子どもの数は1349人にも上ると報告している。さらに、自転車が転倒して頭蓋内損傷や骨折などの怪我をする事故情報も609件あり、走行中だけでなく停車中の事故も少なくない。

乳児を乗せられる園バスは少ない

 どうすればこのような痛ましい事故を防ぐことができるのか。保育園や幼稚園が徒歩圏内であれば良いが、園と自宅の距離が離れている場合や子どもが複数いる場合、保護者は自転車や自家用車を利用せざるを得なくなる。そして都市部であれば自家用車より自転車の選択をする人は多いだろう。

 しかし複数の子どもを自転車に乗せることは危険を伴い、乳児であればなおさら。では園側が園バスを走らせれば解決するかといえば、そういうことでもない。株式会社船井総合研究所が2017年に発表した調査研究では、乳児をバスに乗せる際は、チャイルドシートの設置などが必要になる場合があるため、「乳児を乗車させるリスクを回避する意味からも一般的には3~5歳児を預かる幼稚園等で園バスを導入している例が多く挙げられる」と乳児が乗れる園バスは少ないと報告している。

保育園まで行かずに子どもを預けられる「送迎保育ステーション」

 すべての保護者が、安全に子どもを育てていきたいと願っているし、自転車に子を乗せて走行する際は安全運転を心がけるだろう。一方で、雨天なのに自転車で送迎せざるを得なかったり、子ども2人を自転車に乗せなければならなかったり、リスクを伴う送迎方法を取るしかないという八方塞がりな状況もある。ちなみに自転車に乗せても良い子どもの人数は2人まで(安全基準を満たす自転車に限る)だ。

 そこで保育園の送迎で困難を抱える保護者にとって支援策となる、「送迎保育ステーション」という保育施設も存在する。送迎保育ステーションとは、朝と夕方に子どもが日中に在籍する保育所などに登降園するまでの間、その子どもを一時的に預かってくれる保育施設のことだ。

 送迎保育ステーションを導入している東京都町田市を例に挙げよう。7~8時に「町田駅」の近くに設置されたステーションに子どもを預かり、8~9時に車で各保育所を回りながら子どもを送る。そして、16~17時に預けた保育所を回り子どもを迎えてステーションで再度預かる、というものだ。町田市では1~5歳の子どもを対象にしており、乳児でも利用することが可能だ。

 送迎保育ステーションを利用すれば、町田駅が最寄り駅でなくても駅前にステーションがあるので、保育園まで足を運ぶよりも負担は少ないだろう。また、駅なので仕事の行き帰りに立ち寄りやすいという利点もある。ただ、送迎保育ステーションは、千葉県の「南流山駅」や神奈川県の「希望が丘駅」などにも設置されているが、まだその数は非常に少ない。

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