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生理用品のコマーシャルで使われる月経血は「ブルー」のままでよい

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Thinkstock/Photo by Panya_

 日本で最初に生理用品のテレビコマーシャルを流したのは、元祖使い捨てナプキン「アンネナプキン」を開発、販売したアンネ社である。1961年のことで、コマーシャルには三木鶏郎が作った「白いアンネのワルツ with you」という歌が使われていた。

 月経は恥ずべきものだと教えられ、口に出すのも憚られ、アンネナプキンの登場によって、ようやく「アンネ」という言葉で月経を表すことができるようになった当時、生理用品のコマーシャルに対する風当たりは強かった。

 小学校のPTAから、「子どもから「『アンネ』ってなに?」と聞かれて困るので、テレビコマーシャルはやめてほしい」と苦情がきたこともあった。また、男子生徒が「白いアンネのワルツ」を歌いながら、女子生徒をからかうということも起こったため、以後のコマーシャルでは歌は使われなくなり、メロディだけが流れるようになった。

 テレビコマーシャルで経血を模した青い液体を使ったのも、アンネ社が最初だった。今日まで日本の生理用品メーカーは、テレビコマーシャルで青い液体を使用している。

 経血を赤い液体ではなく、青い液体で表現することに対し、「月経という生理現象をありのままに伝えていない」という批判がある。実際、イギリスや北欧の生理用品のコマーシャル動画では、ナプキンに赤い液体を吸収させるシーンのみならず、女性が経血を流しているシーンも映し出されている。

 この動画のコンセプトは、「女性は青い液体ではなく、赤い血を流している。ありのままを伝えるべきである」というもので、月経中の女性の憂鬱な表情も映し出されている。やたらと明朗快活な日本の生理用品コマーシャルとは、対照的である。

 たしかに、月経がタブー視されてきた歴史を振り返れば、「ありのままを伝える」ということは重要であり、この動画は評価できる。しかし、すべてをさらけ出さなくても、タブー視は払拭できるということも踏まえておきたい。

 そもそも、大々的な広告戦略によって日本の月経タブー視を短期間で軽減したアンネ社のコンセプトは、「私たちは血液とか経血とか、要するに血という文字も使用しない」であった。

「例えば、出血の多い日、少ない日が生理期間中にはあるが、その表現は『日と量によってお使い分けください』となる。決して出血とはいわない。視覚に映る『血』という文字は、凄惨でこそあれ、決して清らかで平和ではない」

 実は、わたしも「血」は苦手であり、テレビドラマでも見たくない。経血も「排泄物」「汚物」だと思っている。

 かつての月経タブー視に対する反動からなのか、月経や経血を神聖視し、トイレのサニタリーボックスを「汚物入れ」と呼ぶことを良しとしない考え方もある。しかし「神聖視」や「特別視」は、かつての「タブー視 (不浄視)」と紙一重なのだ。

 月経は「単なる生理現象」、経血は「排泄物」と見なし、過剰な意味づけを行わないことが肝要である。

月経を単なる生理現象として捉えるということと、できる限りさらけ出すということは、違う。また、同じ表現でも、時代や文化によっては「露悪」と捉えられ、反発を招くこともある。それは、月経に対する特別視を払拭し、偏った女性観を解消しようとする立場にとっては、マイナスでしかない。

 いずれにしても、日本の生理用品コマーシャルが青い液体を使うことに、私は抵抗を感じない。「コマーシャルのせいで、経血は青いと思っている男性もいる!」と然も問題であるかのように言う人もいるが、瑣末なことである。

 明朗快活すぎる日本の生理用品コマーシャルもわざとらしいが、テレビで赤い経血を見たいとも思わない。そんな私のお勧めのコマーシャルは、花王がベトナムで販売している「ロリエ スーパースリムガード」のコマーシャル動画である。

 経血は青いが、弊害は感じられない。とにかく薄くて吸収力が高いんだな、ということがわかるし、何より爽快である。

田中ひかる

1970年東京生まれ。著書に『月経と犯罪 女性犯罪論の真偽を問う』(批評社)、『「オバサン」はなぜ嫌われるか』(集英社新書)、『生理用品の社会史 タブーから一大ビジネスへ』(ミネルヴァ書房)、『「毒婦」 和歌山カレー事件20年目の真実』(ビジネス社)など。

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